バイカル・パルプ製紙工場をついに閉鎖

バイカル・パルプ製紙コンビナート =PhotoXPress撮影

バイカル・パルプ製紙コンビナート =PhotoXPress撮影

ロシア政府はバイカル・パルプ製紙コンビナート閉鎖の決定を行い、長期に渡った環境論議に終止符を打った。

 バイカル・パルプ製紙コンビナートの閉鎖には数年、そして5億ドル(約4600億円)がかかることがすでに明らかとなっている。この額には、9700万ドル(約90億円)の負債は含まれていない。同コンビナートは環太平洋諸国への輸出を行っていたが、その分の生産を移管するのか否かについては、まだ明確な回答がない。

 アルカジー・ドヴォルコヴィチ副首相は昨日、全ロシア・林業従事者フォーラムの席で、政府がようやくこの決定を行ったことを伝えた。

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バイカル湖を守れ

 「バイカル・パルプ製紙コンビナートを、工場を移設しながら、徐々に閉鎖していく決定を行った。これは難しい作業で、今後数年かかる」。

 アリヤ・サミグリナ副首相報道官によると、活動の即時停止、順次停止、施設を現代化した活動継続、改編など、さまざまな案が協議され、最終的に順次停止に決まったという。生産は他の工場に移管される可能性があるが、詳細はまだ明らかになっていない。

 

年間10万立法メートルの廃水を垂れ流す 

 同コンビナートは、イルクーツク市から150キロメートルに位置するバイカル湖の南岸に、1966年に建てられた。パルプ生産量は年間約20万トン、従業員数は約1600人。主な製品は針葉樹硫酸塩パルプ。取引先は、国内外(中国を含む環太平洋)の化学産業企業や製紙工場。

 同コンビナートがパルプ製品市場で最大手になったことはないが(国内生産量の10%以下)、地理的条件がシベリア、極東、アジアの顧客との取引を可能にする、戦略的優位性となっていた。

 だが、同コンビナートは、バイカル湖汚染問題で、長年に渡って非難されてきた。国際環境保護団体「グリーンピース」のデータによると、年間10万立法メートルの廃水を流していたという。2008年9月、ロシア連邦自然利用分野監督庁の要請で、閉鎖型水循環システムに移行したが、これによって人絹漂白硫酸塩パルプといった収益性の高い製品の生産が不可能になり、負債が重なっていった。

昨年末に資金難と原料不足でパルプ化が停止した。今年初めの負債総額は9700万ドル(約90億円)にのぼった。

 

コンビナートと従業員の今後は 

 バイカル・パルプ製紙コンビナートの最大の融資銀行である、対外経済活動発展銀行(ヴニェシュエコノムバンク)は、この場所にホテル、リゾート、または環境に優しい製品の生産工場をつくる可能性を示唆した。従業員の職業再訓練の問題も協議されており、すでに雇用センターが設置された。対外経済活動発展銀行エンジニアリングのドミトリー・シェイベ氏は、同コンビナートの閉鎖に4~5億ドル(約3700~4600億円)かかると伝えていた。同氏によると、操業停止には2年以上、廃棄物処理には4~6年かかるという。

 

*コメルサント紙、エクスペルト・シベリア誌、RBCデイリー紙の記事を参照。

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