「雪の売り方を覚えよう」

=オリガ・マルコヴィッチ

=オリガ・マルコヴィッチ

「イワン山」をスキーで滑りながら考えた。ロシアの冬は、それ自体「ロシア的イデー」で「観光ブランド」であり、ありとあらゆるロシアのアイデンティティーを集約している。このことを考え出したのは、ウラン・ウデからバイカル湖への道すがらで、雪は身の丈ほどあった。

なぜ冬がロシアン・ブランドなのか 

その理由は第1に、何と言ってもロシアの冬はスゴイ。私は、ジャマイカ、ゴア、モルディブ、ヨルダンなどで休暇を過ごしたし、ヨルダン、中国、イタリア、フランスも訪れたが、ロシアの雪の印象はそれに勝るとも劣らぬものだった。

寒さを嫌う人がいるかもしれないが、現代の数々の防寒技術――保温下着、コンパクトな暖房機、保温性に優れたスキーウェア――などをもってすれば、まったく不便は感じない。

第2に、ロシアの冬は幻想的なまでに美しい。わが国の建築家や自称建築家や、いわゆる「ロシア・スタイル」や「ユーロ・リフォーム」の愛好者が、どれほど醜悪かつキッチュなアイデアをひねり出そうと、雪に覆われた街、山、平原の美しさを損なうことはできない。

第3に、冬は健康である。活動的で、いろんな楽しみがあり、元気溌剌、頬は赤らむが、夏は逆で、けだるく眠たくて、活動的でない。

例えば、ペルミ市近郊のイワン山は、遊びの多様さからいって、どんなに凝ったアクアパークにも負けないだろう。おまけにそういうリゾートがわずかな投資で実現できるのだ。主な建築資材である雪は無尽蔵にある。

愛国心をも満足させる 

ロシアの冬は、政治、イデオロギー抜きで、それ自体で魅力満点だが、想い起こせば、冬は、ロシア人とともに、ナポレオン、ヒトラーと戦ってくれた。してみれば、これは十分に愛国的なブレンドでもあり、他の何か「ロシア的な」イメージも、容易にこれに結びつけることができる。

ロシアのウォッカは、冬に身体を温めてくれるし、バーニャ(ロシア風サウナ)に入った後では、雪だまりを転がるのが決まり、という具合で、無理やり愛国的観念をくっつける必要がない。ロシアの雪、健康な美しい頬の赤らみ、橇、森、色んな遊び…。これでもう十分だ。

 夢は広がる 

こうしてロシアの冬は、トルコの地中海、イタリアの遺跡に比肩し得るだろう。世界の観光ビジネスに、魅力あふれるニッチ市場が出現する。

要するに、我々は雪の売り方を覚えねばならないということだ。雪は、石油とガスよりたくさんある。

バイカル湖で私が驚いたのは、地元の役人が「うちはシーズンが短くてねえ、7月と8月しかないんですよ」とこぼしていたことだ。しかし、世界各地の様々な自然を見た私にとっては、冬の4ヵ月の方が面白いくらいだ。

ロシアの自然は、その広大さと多様さで、群を抜いている。乏しい予算に苦しんでいる科学研究の分野だって、冬のビジネス化から恩恵を被ることができる。省エネ、暖房に優れた建築、繊維の、巨大な潜在的国内市場を発展させ、ロシア製防寒服を輸出する。ワーレンキ(フェルト製防寒長靴)も、お土産としてなら十分いける。その一方で、最新の技術を駆使した、美しい現代的な衣服をどんどん輸出するのだ。

詰まるところ、ロシアには、冬以外に、世界のオファーできるような、いかなるイデーもブランドも「ロシア的世界」もありはしない。私はそのことを最終的に確信した。あとはすべて、この冬の応用だ。

ペルミで冬を堪能したら、例えば、現代美術館PERMMを見学し、歌劇場でオペラを聴き、ウラン・ウデで仏教寺院をのぞき、サンクトペテルブルクに飛んでしばらく見物した後、モスクワで渋滞に巻き込まれる、なんていうのも悪くない。