石上純也氏のプロジェクト実現へ

=PhotoXPress撮影

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モスクワ中心部に位置する、1872年開館の歴史ある科学技術博物館が、5年の改修工事に入る。改修は、日本の有名な建築家、石上純也氏の案に沿って行われることになる。石上氏は世界的に注目されている若手建築家で、一昨年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞している。

博物館は所蔵品の番号付けやその目録の作成、博物館の暫定サイトの作成、改修中の所蔵品保管場所の確保など、改修のための準備を整えた。5年後には世界有数の現代的な科学技術博物館として、その姿を披露するだろう。

2011年に行われた同博物館の増改築コンペティションで優勝した日本の有名な建築家、石上純也氏が、この改修工事の中心的な存在となる。博物館両脇の小公園がつながる「公園のような美術館」が、石上氏のプロジェクトだ。

ただ、プロジェクトのすべてのアイデアが承認されたわけではない。一番大きな問題となったのは屋根の部分だ。石上氏の設計では、薄いプラスチック製の透明フィルムが屋根として使用されるが、専門家がより耐久性のあるガラス製の屋根を要求している。それ以外の主要な部分ではアイデアがそのまま採用されることになる。

石上純也氏の科学技術博物館増改築案

石上案では、中庭を透明な「膜」で覆うことになっていた。しかし、モスクワの気象条件、積雪量に耐えられるか心配する専門家が多く、より耐久性のあるガラスが使われる。 また、敷地全体を4メートル近く掘り下げ、ピロティー式建築のようにし、そこに樹木を植えて公園にする計画。こうして建物の地下が、透明な屋根をもつ開放的な空間に生まれ変わる、としている。

科学技術博物館のボリス・サルトィコフ館長はこう話す。「石上氏は既存の建物の外観を大切にしているため、すべてがそのまま残される。ただ内部については、異なる高さの建物3棟に約100ヶ所の階段部分があるにもかかわらず、エレベーターがまったくないため、新たな要求に応じて完全に変えることになる」。

2月までには最終的な改修案がまとまるが、1907年に建設された既存の建物の支持構造物や、大講堂、正面大階段、化学実験室などはそのまま残されることが決まっている。

工事中も展示品は別の場所で見学可 

所蔵品は改修工事中でも、別の場所で一部見学することができる。「全ロシア博覧センターの元『トランスポルト(交通機関)』パビリオンに、当博物館の4分の1ほどの小さな展示スペースができる。

また、元『モスクヴィッチ』工場には現代的な倉庫システムがあるため、そこの1万5000平方メートルを借りて、壁、保温庫、特別な空間などをつくり、主な保管場所にして所蔵品を持ち込む。あとは児童プログラムすべてを、I.A.リハチョフ工場の文化会館に移すことで合意した」と館長。

科学技術博物館はこの改修工事と同時に、モスクワ大学の敷地内に科学教育施設を建設する予定だ。

新装開館は2018年初め 

改修工事が完了するのは2016年末だが、新装開館は2018年の年初めになる。準備期間の1年間は、新しい展示品の収集、博物館設備の搬入や設置に費やされる。改修されてもなじみの雰囲気はそのままに、そして新たな来館者を魅了するものになる、と博物館関係者は自信をのぞかせる。

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