北極海航路を夏は東へ、冬は西へ

写真提供:novatek.ru

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ロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」と同国2位の独立系天然ガス生産・販売会社「ノバテク」は、「ヤマルLNG」社からアジア太平洋地域諸国向けに液化天然ガスを納入する、事前契約を結ぶ準備を進めている。

「ヤマルLNG」社は、ヤマル半島北東の南タンベイ・ガス田で、天然ガスの採掘、加工、輸出を行うためのインフラを整備することになる。このプロジェクトでは液化天然ガス工場の建設が予定されており、LNG生産は2016年に500万トン、2018年に1500万トンになる見込みだ。

サベッタ港の建設開始 

工場の近くでは7月、多機能海港サベッタ港の建設が始められた。これはロシアから西欧、北米、南米、アジア太平洋地域諸国に、LNG、石油、天然ガス・コンデンセートを輸出する拠点港になる。北極海航路が航行可能となる7月から11月は東側へ船を進め(ベーリング海峡経由)、12月から6月は西側へ船を進める(大西洋経由)。

「ヤマルLNG」社の出資比率は、「ノバテク」80%(今後51%に引き下げる予定)、フランスの石油・ガス会社「トタル」20%。資金は株主から60億~70億ドルを借り入れ、さらに完了が2016年末と見込まれている、プロジェクト第一段階の販売収入から得る。

プーチン大統領:「ガスプロムを通じて輸出契約を結ばなければならない 

ただ現在のところ、LNG市場に参入している「ガスプロム」が、ガス輸出独占権を握っている。「ノバテク」の所有者であるゲンナジー・チムチェンコ氏は10月、アメリカのフォーブス誌のインタビューに答え、独占企業である「ガスプロム」の方針により、「ヤマルLNG」の資金調達が困難になっていると述べた。

「(ガスプロムは輸出仲介人として)客との契約書には一切署名をしていないし、いかなる約束もしようとしない」。

「ノバテク」の共同所有者で最高経営責任者(CEO)を務めるレオニード・ミヘリソン氏は、この状況を何とかしようとプーチン大統領に直接面会した。プーチン大統領は、「ノバテク」が「ガスプロム」を通じて輸出契約を結ばなければならないと伝え、「あなたたちが走り回らなくていいよう希望する」と述べた一方で、事前契約を急ぐよう要求した。これは「ガスプロム」に、双方が合意可能な解決策を見つけるべきだというメッセージを送ったと考えることができる。そのため、プーチン大統領との会談後、「ノバテク」の株は2.5%上昇した。

LNG輸出に期待 

「ガスプロム」はアジア太平洋諸国との取引で、LNG輸出に期待している。同社のアレクセイ・ミレル社長は、東方への輸出量は、西方への輸出量と同等もしくはそれ以上になると見込んでいるが、まだ端緒についたばかりだ。ヨーロッパへの昨年の輸出量は1540億立法メートルで、うちLNGは30億6000万立法メートルにすぎない。34ロット中30ロットは日本、韓国、中国、タイ、台湾、インドに納入された。

ロシアでは現在、年間生産量1000万トンの、「サハリン2」開発事業の液化工場が一箇所稼働しているだけだ。「ガスプロム」は2017年までに、ウラジオストクにLNG生産基地を建設する計画を立てている(投資額約2200億ルーブル≒約5600億円)。サハ共和国のチャヤンダ・ガス田とイルクーツク州のコヴィクタ・ガス田が、採掘中心部となる。

「ガスプロム」は現在、ロシアの資源と他国の資源の輸出入計画を立てているところだ。「ガスプロム」の子会社である「ガスプロム・マーケティング・アンド・トレーディング(GM&T)」は10月、インドの天然ガス公社「ゲイル」と、LNG年間250万トンの20年納入契約を結んだ。「ガスプロム」は12月初め、カタールの国営石油製品・ガス販売会社「タスウィーク」から、液化石油ガス(LPG)を購入する計画も発表した。