テレビドラマが足りない

タス通信撮影

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ロシアの連続ドラマ市場は、リメイク用に世界中の連続ドラマを購入している。大量に輸入した結果、安くて単純なドラマは尽きてしまい、高くて難しいドラマばかりがわずかに残っているようだ。

ゴールデンタイムの8割が連ドラ 

ドラマを意味する「シリーズ」という言葉は、ソ連時代にはなかったが、現在は長いシリーズのドラマがロシアのテレビ画面を占領している。ゴールデンタイム5時間のうち、4時間が連続ドラマの放映時間となっていて、残りはニュースやトークショーだ。これは欧米各国の2.5倍、また中南米諸国や中国の1.5倍である。長期連続ドラマのコマーシャルは、他の番組のコマーシャルよりも高額で、テレビ局の収入の3分の1ほどをドラマが稼いでいる。

しかも、これらのほとんどがロシアのドラマだ。アメリカの「サンタ・バーバラ」や、ブラジルの「エスクラバ・イザウラ(女奴隷イザウラ)」を見るために、ロシア人がテレビにかじりついていたのも今は昔の話で、ほとんど外国のドラマは見なくなった。世紀の変わり目には、つまり10年ほど前には、外国ドラマの需要は急激に落ちていて、代わりとなるロシアのドラマもほとんどないという、危機的状況にあった。

外国ドラマのリメイクに活路 

この危機を救うきっかけとなったのが、映画製作会社「アメディア」が2004年に放送局「CTC」で放送した、アメリカの人気ドラマ「ザ・ナニー(乳母)」(1993~1999)のリメイク版「私のすばらしい乳母」だ。これにより、西側の人気ドラマをリメイクすれば、外国のドラマをそのまま取り入れた時のように、視聴者が違和感を感じることもなく、製作者も多くの問題から解放されることがわかった。台本はすでにあるから、そこに少し手を加えるだけでいいし、登場人物像もできあがっているし、セットから役者の配置まで、必要なものを原作から拝借するだけでドラマができてしまう。ほぼ完成しているドラマを少し変えるだけなのに、大成功してしまうのだ。

本家をしのぐヒットも 

「アメディア」は次に、コロンビアのドラマ「Yo Soy Betty La Fea(ベティ〜愛と裏切りの秘書室)」のリメイク版「美しく生まれないで」を製作し、これもヒットとなった。ちなみにこのコロンビアのドラマは、アメリカのドラマ「アグリー・ベティ」の原作でもある。

他の放送局もこの流れに乗ってさまざまなドラマをリメイクしたが、どれも大成功で、多くのプロデューサーが続編製作権を原作の作者から買いあさるという事態まで起こった。例えば、アメリカのシチュエーション・コメディー「HEY!レイモンド」のリメイク版「ヴォロニン家」は、すでに2シーズンもロシアのオリジナル続編を製作しており、今後も続く予定だ。

視聴者はリメイクとは知らず 

リメイクされているのはシチュエーション・コメディーばかりではなく、200シリーズ以上もあるような中南米のメロドラマなども多い。リメイク・ドラマはすぐに浸透し、毎晩大好きな連続ドラマを見ている視聴者は、西側のドラマのリメイクを見ているなんてこれっぽちも考えない。あまりの人気ぶりに、おもしろい現象も見られるようになった。例えば、リメイク・ドラマ「一緒にいて幸せ」は、シチュエーション・コメディーで上位5位以内に入るほどの人気があり、調査会社「ギャラップ」のデータによると平均視聴率は約7%だ。一方でこのアメリカの原作「マリード・ウィズ・チルドレン(既婚で子持ち)」は、ロシアのゴールデンタイムに放送されることはなく、夜中の放送で平均視聴率は0.1%となっている。

毎日放映で年間200本製作 

ただすぐにまた問題が生じるようになった。ドラマの80%をリメイク版が占めていたものの、その割合が落ち込み、2010年に近づく頃には3分の1ほどになってしまったのだ。それは需要の落ち込みではなく、放送システムによるものだ。

連続ドラマの放送が週1回の西側諸国の「垂直」システムとは違い、ロシアはドラマが終了するまで毎日放送を続けるという「水平」システムだ。視聴者にとっては嬉しいことだが、製作者は年間25本ではなく、170~200本のドラマをつくらなくてはならず、さらに視聴率が落ちて終了してしまわないようにレベルを保たなくてはならないという、プレッシャーの毎日なのだ。

世界の40年分の人気ドラマをリメイクし尽す 

このような激しいリメイク速度により、わずかな年数で世界の40年分の人気ドラマをリメイクしつくしたと言っても過言ではない。どれもリメイクしてしまったため、製作者は傑作を見つけることができずに困っている。

すでに放送されたドラマではなく、現在進行中のドラマもあるが、それにはまた別の問題がある。まず価格だ。放送済みのシチュエーション・コメディーやメロドラマのリメイク権は、通常連続ドラマの予算の4~5%以下で済むが、新しいものだと8~9%にもなってしまう。

製作費はというと、例えばアメリカのドラマ「ドクター・ハウス」なら1200万ドルで、ロシアの平均的なドラマだと1エピソードが最大20万~30万ドルほどだ。放送権を買うことなく、構想を着色したドラマ(「ドクター・ハウス」を真似た「ドクトル・トゥルサ」)にしてみたが、それは大失敗だった。

また、難度が高い、新しいドラマの場合、それなりに目の肥えた視聴者が求められることになり、概して、いろいろ問題が出てくる。製作者が比較的新しいヒット作のリメイク権を高額で購入しても、成功が保証されているわけではない。2つほど例をあげられる。第一放送の「プリズン・ブレイク」のリメイク版と、CTC放送の「ママと恋に落ちるまで」のリメイク版は大失敗だった。リメイク版はシーズン2の途中またはその直後のエピソードから撮影されたのだ。

選択肢を広げるべき 

今の危機的状況の打開策はまだ見えてこないが、望みなきにしもあらずだ。コメディーやメロドラマばかりがこれまでリメイクされてきたのは、その他のジャンルが売れそうにないと判断されてきたことが理由であって、ロシアの製作者はこれから選択肢を広げるという手段に出るだろう。イギリスのSFドラマ「火星の生活」のリメイク版「月の裏側」や、スペインのスリラー・ドラマ「エル・インテルナド・ラグナ・ネグラ(ネグラ湖寄宿学校)」のリメイク版「閉鎖された学校」が成功していることは、望みを与えてくれる。