命がけの世界のジャーナリストたち

「事実を殺すな!」=AP通信撮影

「事実を殺すな!」=AP通信撮影

2012年世界ジャーナリスト死亡数が過去最多となった。今年に入ってから、世界29ヶ国・地域で139人が命を落とした。世界のマスコミ記者の命を守るには、明確な紛争地行動規定を定めるという方法しかなく、それも記者だけではなく、紛争当事者にも順守してもらうことが必要になってくる、と専門家は話す。

昨年より3割増で戦後最多 

死亡者数は2011年と比較すると3割強の増加で、第二次世界大戦後最多となる。国連報道権利擁護団体「プレス・エンブレム・キャンペーン(PEC)」の報告で具体的な数字が発表された。PECのブレズ・ランパン事務局長によると、多くの記者の死がシリア情勢に起因しているという。今年初めからシリアでは36人のジャーナリストが死亡し、うち13人は外国人記者だった。紛争のどちら側もジャーナリストをターゲットにする。シリア紛争のジャーナリスト死亡数はここ100年で最悪となった。

シリア、ソマリア、パキスタンの順 

ジャーナリストにとって次に危険性が高い国はソマリアで、2012年1月から19人が亡くなっている。続いてパキスタンの12人、メキシコとブラジルの11人、ホンジュラスとフィリピンの6人、バングラデシュの4人、イラク、エリトリア、インド、ナイジェリア、ガザ地区の3人、アフガニスタン、ボリビア、コロンビアの2人となっている。

ロシアでは今年12月5日、全ロシア国営テレビ・ラジオ会社(VGTRK)のカズベク・ゲッキエフ氏が殺害されており、死亡者数1人の国に数えられた。

明確なルールの不在 

ジャーナリストの死者数が多いのは、紛争地での仕事の経験が乏しいことや、ジャーナリストや紛争当事者がこのような状況下で順守すべき規則が存在しないことが原因だと、危険地報道センターのミハイル・メリニコフ所長は考える。

「ジャーナリストはどこで何をすべきか、保険をかけるべきか、戦線付近で起こるできごとに加わるべきか、戦隊と一緒にいるべきか、テロリスト、過激派、反対派などのすべての当事者のできごとを報道すべきなのか。ステータス、読者、広告費などのために、紛争が起こっている場所に深く入って行くことがいまだに主流となっている。いかなる報道でも人間の命には代えられないわけだから、これには議論の余地があると思う」。

情報戦争先行で記者が標的に 

ロシア記者協会のフセヴォロド・ボグダノフ会長は、紛争当事者が記者を敵やスパイと見なしてしまうことに問題があると考える。信用できる情報源というとらえ方はもはやされていないのだ。これは情報戦争やプロパガンダが、武力紛争よりも先行していることが原因となっている。

「われわれは社会の目と耳になり、実際に起こっていることを社会に報告する使命を担っている。これがなくなってしまったら、個人も社会も何も信用できなくなる。ジャーナリズムは常に政治の術策とは一線を画していたし、そこに意味があった。われわれの専門を『ゴシップ』レベルに低下させてはいけない」とボグダノフ会長は話す。

平均毎週2人が犠牲に 

PECのデータによると、世界ではここ5年、毎週2人のジャーナリストが亡くなっているという。もっとも危険な地域は中東で、次がメキシコおよび中南米、それに続いてアジア、アフリカとなっている。これらの地域では、毎年数十人の命が消えている。西ヨーロッパと中央ヨーロッパでは毎年1人ほどで、それも事故が原因だという。

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