記者会見する自民党の安倍晋三総裁。=タス通信撮影
「対中関係の緊張を背景に良い展望」
安倍自民党総裁は、ロシアとの対話の用意があるとしているが、下斗米伸夫・法政大学教授は、事実、新内閣にとって日露関係が優先事項になる可能性があると言う。
「民主党は、さまざまな反自民党勢力が寄り集まったもので、組織的に外交政策を展開する用意が完全にはできていなかった。安倍次期首相は、まず外交に手をつけることになるだろう。具体的には、民主党が失敗した日米関係の正常化から始めることになる。因みに、安倍氏は首相経験者だが、そのときの最初の外遊先は中国だった。しかし、現在、状況は、我々が目の当たりにしているように、2006年当時からは一変している。
日露関係について言えば、対中関係の緊張を背景に、良い展望が開けている。安倍氏は外交の経験もあるし、日露関係は、ある程度、安倍内閣の優先事項になるのではないか。中国とのように、領土問題で関係がこじれることは望まないだろう」。
「シベリア・極東開発で協力」
外交評論家で元毎日新聞モスクワ支局長の飯島一孝氏も、日露関係に好転の機ありとみる。
「安倍氏はまず、中国と韓国との関係悪化に対処しなければならないが、最も重要なのは、アメリカとの戦略的関係を再建することだ。だから、日露関係は、これらの優先課題にめどが立ってから取り組むことになるだろう。
しかし、ロシアは現在、シベリアと極東の発展を重視しており、その文脈から、対日関係も重要視している。したがって、安倍氏としては、速やかに両国の協力関係を発展させるべく、具体的な計画を作成し、それと並行して領土問題の解決に取り組んでいくべきだろう」。
「強硬な外交で“崩壊”を挽回」
一方、ロシアの専門家のなかには、安倍氏の領土問題への対応は、民主党政権よりかえって厳しくなると見る者もいる。ワレリー・キスタノフ氏はこう述べる。
「安倍氏は、民主党政権による、いわゆる外交の“崩壊”を酷評している。日米関係は悪化し、中国はその機に、尖閣諸島をめぐって活発に動き始めた。また、民主党政権時代に、メドベージェフ露大統領(当時)が国後島を訪問し、韓国大統領も竹島に上陸した。
先週の12月10日に安倍氏は、「文藝春秋」誌に、10頁の長文の論文を発表し、自分が抱く日本の未来像を開陳した。そこで彼は、この二つの訪問を日本外交史上の大失敗と呼び、その挽回を目指す、と述べている。
以上総合すると、日本の外交政策はより強硬になると考えられる。安倍氏の最初の外遊はたぶん米国になるはずで、そこで民主党時代に開いた“穴”を塞ぐよう努めることになろう」。
「対露関係改善し、外交的孤立を避けるはず」
アンドレイ・フェシュン氏は、いわゆる領土問題をめぐる、日本の外交政策に変化はないと考えるが、露政府との激しい対立は避けるだろうとみる。理由は、両国は経済協力の発展により力を注いでいるからだ。
「日本は、中国にくわえ、韓国とも関係が悪化して、極めて苦しい立場に陥っている。この状況で、対露関係も悪くするのは非常に不利だ。おそらく日本は、対露関係を好転とまでいかなくても、経済プロジェクトなどをテコに、多少なりとも改善しようと努めるだろう」。
ロシアには、日本との経済協力を発展させるためにオファーできるものがある。このチャンスを逸しないことを期待する。
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