写真提供:nasa.gov
ロシア連邦宇宙局の依頼にもとづいて、ロシアの研究者や専門家は、軍事監視装置および民間監視装置を一体化するような、宇宙ゴミ・危険小惑星監視システムのプロジェクトを進めており、早ければ2014年にプロジェクトへ予算が支出され始めると、宇宙局科学技術評議会の会議参加者が伝えた。
軍と民間、数十の機関が協議
シリン設計総長によると、会議にはアカデミー研究所の職員、宇宙局関連会社や国防省下部組織の代表ら、数十機関から人が集まった。この会議では、宇宙ゴミ追跡プロジェクトについてのさまざまな案が出され、科学アカデミー天文学研究所は、直径約1.5メートルの反射鏡がついた天体望遠鏡2基を制作することを提案した。そのうちのひとつであるAZT-33VMは、すでにサヤン天文台に設置されている。
中央研究所「コメタ(すい星)」は、直径約1.5メートルの反射鏡がついた大きな宇宙望遠鏡2基をつくる、「天空」プロジェクトを進めている。天文・測光光学観測装置科学網の望遠鏡網は、比較的安価で小さな望遠鏡を使用した、価格を抑えた小惑星追跡プロジェクトを提案している。
多目的システム
2020年までの実現を目標として、これらすべてが統一システム・プロジェクトとしてまとめられる予定だ。
「数十個の新しい光学機械と、いくつかの既存の大型アンテナを基礎にした電波探知システムからなる、光学望遠鏡網だ」とシリン設計総長は述べた。また、従来のシステムとは異なり、新システムでは情報を発信するような統一センターがないという。「相互につながり、必要な人に情報を提供できるような、複数の個別のセンターをもつシステムにする計画だ」。
軍事技術も活用
宇宙ゴミが軍事面だけの問題とはならないため、プロジェクトを進めるうえで、一方では軍事的利益を考慮に入れながら、他方では軍事機器の有効活用がはかられる。
「国防省が定めている対策の補足となるような、観測装置の開発計画も検討されている。国防省の機械と、宇宙局や科学アカデミーが発注した機械をひとつにした、統一システムをつくる」とシリン設計総長。
完全な追跡システムには、地球のさまざまな場所に観測所がなければならないが、軍事となると国外に機械は設置できない。ここで科学アカデミーが役に立つ可能性がある。「科学アカデミーや宇宙局の関連でしかわれわれは外国では活動できない。これらの機関は世界中の天文台に装置を設置するよう交渉できる。また、国防省用の光学装置製造でつくられた在庫品も活用したいと考えている」。
ロシアは独自の道を行け
会議の出席者らは、ロシアは比較的少額の投資で、世界に大きな影響を与えられるようなニッチ分野を選ぶべきで、アメリカに対抗する必要はないと考えている。
「ロシアが有する可能性の範囲内で、ロシアの声が大きく響くような研究のニッチ分野を見つけられるだろう。宇宙ゴミや小惑星などもそこに含まれる」とシリン設計総長。
ニッチ分野として、例えば地球に近づく小惑星の、より正確な軌道を割り出すための”密着”は、アメリカの宇宙研究者がほとんど着手していない。
天文・測光光学観測装置科学網のレオニード・エレニン氏はこう言う。「新たに発見される小惑星の多くは、あっという間に消えてしまう。数日間の観察で計算される軌道の精度は低く、消えて次に現れたらまた同じ作業のくりかえしだ」。
*完全版(ロシア語のみ):宇宙ゴミ追跡システム発注
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