プライヴェートな天空

アメリカのスペースX社が開発した無人補給船「ドラゴン」 =AP通信撮影

アメリカのスペースX社が開発した無人補給船「ドラゴン」 =AP通信撮影

世界の実業界がまた広大な”スペース”(場所)を開拓しようとしているが、今度の対象は”スペース”(宇宙)だ。アメリカのスペースX社が開発した無人補給船ドラゴンは、10月7日に宇宙へと旅立ち、国際宇宙ステーションへのドッキングを果たし、初の本格的な物資輸送を行って10月28日に無事帰還した。好調な滑りだしだが、ロシアも民間宇宙開発を急ぐべきかというと、専門家は必ずしもそうは見ていない。

この分野を立ちあげたアメリカは、民間宇宙ロケットのプロジェクトに長い歳月を費やし、2つのプログラムを実現させた。ひとつ目のプログラムはスペースX社のドラゴン、そしてふたつ目はヴァージン・ギャラクティック社の宇宙船スペースシップだ。

ドラゴンとスペースシップ 

ひとつ目のプログラムは、国際宇宙ステーションや低軌道装置への物資補給を目的とした、幅広い宇宙船の活用に向けられている。「スコルコボ基金」宇宙技術・通信部門発展責任者、ドミトリー・パイソン氏のデータによると、有人宇宙船ソユーズで国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送りこむ場合、NASAは一人あたり6000万ドル(約49億円)を負担しなければならないが、スペースXはそのコストを2000万ドル(約17億円)まで下げ、さらに利益も確保すると請合っている。

ふたつ目のプログラムは、目的が少し異なる。何度も利用できる宇宙往復船スペースシップ1は、運搬用航空機ホワイトナイト1にコバンザメのようにくっついて高度15キロまで上昇し、その後自前のロケットエンジンを使って、宇宙空間との境界である高度100キロに到達し、無重力状態を数分間保って帰還した。飛行機モードで地上に着陸したスペースシップ1は、次回の飛行のために地上でスタンバイしている。

この準軌道飛行は、ロシアのソユーズで国際宇宙ステーションに行って1週間滞在する場合の半値以下となる、1回20万ドル(約1700万円)で一般人も体験できる。

まだ海のものとも山のものとも… 

ロシアがこのアメリカの民間の試みを丸ごと参考にして、自国に広く導入する必要はあまりないだろう。ヴァージン・ギャラクティック社の営業責任者であるスティーブ・アッテンボロー氏は、ロシアにはより確実な宇宙での実績があるため、民間宇宙開発はそれほど緊急の課題ではないと考える。

ロシア連邦宇宙局広報部のアレクセイ・クズネツォフ部長もこう述べる。

「スペースXは宇宙分野で初の民間事業だ。宇宙開発全体で、このプロジェクトがどのような位置づけになるのかを見極めるには時間が必要で、状況を把握できた時にようやく、ロシアの強みを生かしながら国の宇宙開発にどれだけこの経験値を採用でき、ドラゴン規模のプロジェクトに対してどれほどの実現可能性があるかを判断できるようになる。

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アメリカにはリスクを負うことを恐れないビジネスマンが現れた。スペースXのCEOであるイーロン・マスク氏は、多額の出費を負担しただけでなく、一部借金もしたと聞いている。マスク氏はこのプロジェクトを長期的投資と見なしているのだろう。

ロシアのビジネスがこのようなリスクを負う用意があるのか、必要な余剰資金があるのかはわからない。ロシアの民間ビジネスには、これほどの大きなプロジェクトを実現するための、科学的または産業的潜在性があるのかという疑問もある」。

本来の宇宙開発の妨げになるとの声も 

エクスペルト誌のパーヴェル・ブィコフ副編集長の考え方にも、賛成せずにはいられない。

「世界的に、宇宙開発プログラムはある程度不振に陥っており、ロシアも例外ではないが、わが国には、技術が一部古くなっているものの、更新され現代化されている『ソユーズ』に基づいた、完成されたシステムがある。このシステムは宇宙飛行士や物資補給にとってあまり活用しやすいものとは言えないだろうが、完成されていて安価であり、今後もずっとそうだろう」。

ただし、ロシアの宇宙旅行ビジネスについては、ひとつ断言できることがある。ロシア連邦宇宙局がこだわっている、国際宇宙ステーションに再び旅行者を派遣するという構想は、まったく進歩していないということだ。

宇宙企業エネルギヤの航空宇宙センター副所長で、宇宙飛行士であるパーヴェル・ヴィノグラドフ氏は、2008年にこう述べていた。

「宇宙旅行は今日、われわれ専門家にとって、残念ながら、大きな問題だ。若い宇宙飛行士を宇宙船から降ろして、その席に旅行者を乗せなければいけないため、有人宇宙飛行の根幹を揺るがしかねない・・・」。

つまり、ロシアの民間が、準軌道旅行のための宇宙技術開発を提唱するなら、本来の宇宙開発の妨げにならずにすむので、極めてタイムリーだろうということだ。