ニヤズ・カリム
「まず様子見主導権とれず」、エフゲニー・イワノフ
長期間で膨大な選挙費用がかかったものの、面白くて目が離せなかった米国の大統領選と いう政治劇は、 11 月 7日未明に終結した。全国で 51 %の得票率を獲得し、激戦区8州のすべてで勝利した現職大統領のオバマ氏は、前マサチューセッツ州知事のロムニー氏を打ち負かして再選を果たした。
オバマ氏を勝利に導いた要因を緻密に分析するため、専門家たちはこの先何カ月も多忙が続くことであろう。その中には、ロムニー氏の選挙運動は大統領との討論後に波に乗ったが、ハリケーン・サンディがその勢いを失墜させてしまったようだという見方から、投票日の4日前に公表された、失業率に関する労働省の報告書が、オバマ氏勝利の主要因であったと指摘する声もある。
興味深いことに、オバマ氏とロムニー氏に対する米国民の支持は真っ二つに分かれたものの、海外ではほとんどオープンにオバマ氏が支持を受けていた。
オバマ大統領は、これまで米国の国益に反しない限りは外国の国益も最低限考慮しようとする意欲は示してきた。これは、ロムニー氏の態度とは明確に対照的だ。ロムニー氏は、米国の行動に対して「決して謝罪することはない」と堂々と誓っている。
新オバマ政権の外交政策が根本的に方向転換する可能性は低い。しかし、全く変化は生じないと言い切るのは時期尚早であろう。オバマ氏は国内の政策課題に対して精力的な態度をとる一方、グローバルな課題に対してはあまり熱意がない。
そのような状況では、米国の外交政策の主導権を国務長官に握られてしまうことがよくある。クリントン氏の後任が誰になるかが判明するまで、米国の外交政策の輪郭ははっきりしないであろう。
モスクワはオバマ氏の再選を歓迎した。ロシア政界にオバマ氏の支持者が多数いるからではない。米国に対するロシアの政策は、常に受け身であるからだ。モスクワはワシントンが発するメッセージに後から反応する方を好む。
ロシアの指導者たちは、オバマ氏の資質を十分にわきまえているため、既に確立された露米関係を再開させる方がより便利だと感じている。
クレムリンは、ホワイトハウスから発信される露米関係の新たなパラダイムを予期して、「様子を見る」という態度をとり、それを受け入れるか否かを選択できる気楽な立場を維持しているのだ。そのようなアプローチは、ロシアの重要な国益を推進させるのに役立つとは考え難い。
エフゲニー・イワノフ、マサチューセッツ州を拠点とする政治評論家
「競合は続く 国益で対立」、ミハイル・ロストフスキー
オバマ氏の外交路線をロシア寄りと見なすこともできないので、仮にロムニー氏が勝利してもロシアにとって何ら悲劇は生じなかったであろう。それでも、オバマ氏が選挙に勝利した日の朝、私はやはり喜びと安堵の思いに包まれた。
米大統領選の数日前に私はモスクワで、元米共和党政権の高官だった人物と会ったが、選挙結果に関して同氏は拍子抜けするほど気のない言葉を吐いた。「ロムニー氏が勝利しても何が変わりましょう。 今の米外交にできることは非常に限られており、私たちの資源はもはやかつてのそれとは全く違います」
そうした評価は言い逃れではない。ワシントンで民主党員も共和党員も当面の主要問題と見なしているのは中国とイランであり、ロシアはかつて主要問題であったにすぎない。
しかし、政治におけるレトリックは侮れない。政治家たちが抜き差しならない必要性に基づいて決定を行うのは、自身の回想録においてにすぎず、現実にはしばしば可能性の範囲の陰に偏見が潜んでいる。
例えば、リンドン・ジョンソン大統領は米国のベトナム戦争への全面参加の決定を行うにあたり、自身の大統領職の精神をふいにすることを悟っていた。
べトナム問題は、事実上大統領に戦争か「偉大な社会」かの二者択一を迫った。大統領の理性は、ドミノのピースである東南アジアの一国に共産主義国になることを許せば、地域の他の国も不可避的にそれに追随するというドミノ理論に支配されていた。しかし、ドミノ理論は偏見にすぎなかった。
オバマ氏とロムニー氏の違いは偏見に対する姿勢にある。オバマ氏は未来を志向する冷静な現実主義者であり、ロムニー氏は偏見に対する姿勢があいまいな政治家である。
ワシントンに偏見が多ければ多いほどモスクワにも偏見が多くなる。オバマ大統領の1期目においてさえ、モスクワの政界は米国の政治に関するナンセンスな偏見に満ちていた。
「地政学的な敵国ナンバーワン」という無謀なレトリックを操るロムニー氏が勝利していたら、モスクワの反米的偏見がどれほど増したことか、想像するだに怖ろしい。
オバマ氏の大統領2期目が露米を親友にすることはない。双方の国益が一致しない中央アジアやミサイル防衛(MD)の分野で競合が収まる気配もない。しかし、それが偏見に基づかない競合となるチャンスはある。露米という長年のスパーリングパートナーにとってはそれだけでも意味があろう。
ミハイル・ロストフスキー、モスコフスキイ・コムソモーレツ紙評論員
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