Lori Legion Media撮影
ロシアと聞けば外国人は真っ先にマトリョーシカを思い浮かべる。ロシア人もこの民芸品なしに母国をイメージすることができない。
この人形は実際にはそう古いものではなく、初めてお目見えしたのは19世紀末のことであった。
マトリョーシカの故郷はセミョーノフ市。最も伝統的な絵柄で年間25万個が作られており全国最大だ。この正統派マトリョーシカが2014年ソチ冬季五輪の公式記念グッズに指定された。
入れ子人形ヒント
起源については諸説がある。19世紀末にモスクワのマーモントフの玩具工房に日本から禿頭の老賢人・福禄寿の入れ子人形がもたらされたとの説が有力と言われている。その工房で働いていた木工職人ズビョーズドチキンがそれをヒントに入れ子人形を作り、画家のマリューチンがロシアの民族衣装をまとった乙女の絵を描いた。
木製の人形は、仏教の寓話に想いを巡らせてばかりいたために頭が長くなってしまった禿頭の老人から農民の娘へと変身した。ほどなく当時おなじみだったマトリョーナという女性の名前がつけられ、後にマトリョーシカに改められた。 最初のマトリョーシカは青年男女の8つの人形から成っていた。初期のマトリョーシカの特徴は絵柄にあり、黒い雄鶏や鎌や箒など必ず何かを手にしていた。
福禄寿の入れ子人形=LegionMedia撮影。
パリ万博に出品
1900年にパリの万国商工博覧会に出品され、家庭を束ねるとの想いを見事に表現したとして銅メダルが授与された。やがて世界的に有名になり、ロシアの民族的シンボルの一つとなった。
それから100年余り経た今もマトリョーシカは外国人の心を揺さぶり続けている。
2010年6月にパリで開幕したロシア民族博覧会では、美術家ボリス・クラスノフの6㍍と13㍍の巨大なマトリョーシカが見る者をあっと言わせた。
マトリョーシカの形をしたその作品はロシアの民族工芸を映し出しており、ホフロマの民芸品の絵付け、北方の白樺樹皮の編み細工、パレフの塗りもの、グジェリの焼きもの、さらには、ボログダのレース織りの様式まで採り入れられていた。。
とはいえ、マトリョーシカの人気の秘密は美しさばかりではない。単純な玩具に思われるが、多くの情報を宿しており、創世の原理も無限の思想も母性の形象も世代継承の原理も表現している。
マトリョーシカは子供たちに人気があり、子供たちはそれを通して世界や自分についての大切な知識を吸収しているのかもしれない。
かつてその工房があった17世紀の2階建ての建物に今はマトリョーシカ博物館がある。そこには民芸品のマトリョーシカだけでなく、近年人気を集めたマトリョーシカもたくさん並んでいる。
モスクワ・シティで展示された巨大なマトリョーシカ=ビクトリア・ボロンツォワ撮影。
▶イズマイロボ公園
地下鉄「パルチザンスカヤ」。
営業時間: 9時~18時 (毎日)
▶国立歴史博物館(赤の広場) 地下鉄「テアトラリナヤ」または「オホートヌイ・リャード」。 営業時間:10時~19時(木曜を除く)、11時~20時(木)
政治家バージョンも
外国人にとりわけ好評なのはゴルバチョフ、エリツィン、プーチンらの政治家が連なるものだ。外国の首脳や王室をテーマにしたものも人気がある。
とはいえ、極め付きは、優しい笑顔で手にとる人の心を和ませてくれる、長いまつげと紅いほっぺの女の子が描かれた伝統的なマトリョーシカである。
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