プーチン大統領という「ブランド」

タス通信撮影

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プーチン大統領は、世界の主要な指導者のひとりとして、10月7日に60歳の誕生日を迎えた。氏を崇拝する向きもあれば、悪の権化とみなす向きもあるが、ロシアでも海外でも、その存在は一種のブランドとなりつつある。人々は各人各様に、そこに自分のイメージを投影している。

アメリカのフォーブス誌は2年前、「世界で最も影響力のある政治家」として、プーチン大統領をオバマ大統領に次いで、2位に選んだ。3位は中国の胡錦濤主席だった。これはナンセンスだ。今日のロシアの大統領が、国際舞台で中国の指導者より大きな影響を及ぼすわけはないのだから。

とはいえ、プーチン氏は、ロシアという国とは切り離されて、ひとつのイメージとなっている。彼は、混沌の時代の明瞭なシンボルである。このシンボルは、国際システム全体が陥っている混乱した移行状態をうまく映し出しているのだ。

世界の混乱の幕開けとともに登場 

プーチン氏が、「ロシアの安定」をかかげて政権の座についたとき、時代は変わり目を迎えていた。世界は、西側諸国の冷戦勝利のお祭りを堪能しつくし、“きりもみ降下”に入りつつあった。従来の制度構造の崩壊を背景として、急速に混乱が始まった。

西側諸国が自分たちのものさしにあてて作った世界システムを強化しようと、大慌てで取り組んだことにより、構造はすべての面で揺らいでしまった。世界システムはひとつとなり、かつてないほど密着したために、誰かの失敗が例外なくあらゆる国に波及してしまう。

こうして海外で強まる不安定化と、ロシア国内の安定化が両立するはずがない。言いかえれば、大統領は矛盾のただなかに置かれたのである。

プーチン氏は、典型的な進歩の敵であり、古い見方や流行遅れのアプローチのシンボルであると、と多くの人がみなしている。しかし、当の本人は、先進国の政策に対して、いってみれば、怒りをかみ殺した状態にあるようだ(怒りはときどき表に出てくる)。いわゆる先進国は、自ら最後の支柱を壊して、国際情勢をことさらに混乱させている、というわけだ。

実際、プーチン氏は、さまざまな論文やスピーチで、世界は危険で予測不可能なのに、先進国の行動は、それらすべての脅威を増大させるだけだと、一貫して述べている。

それはもう言わずもがなのようだが、それでも、毎度お決まりの戦争、介入、干渉、改革が行われるたびに、その中長期的影響が、先進国をその都度驚かせることになる。イランからリビアまで、また、つい最近起きた問題から、そのような例をたくさん示すことができる。

反先進国の代表格に 

もちろん、こういう姿勢を示すのはプーチン氏一人ではないが、反抗の代表格になってしまったのだ。その理由は、ロシアは、ソ連崩壊後に衰えたものの、核と資源をもつ野心的な国であることに変わりなく、その意見を無視できないことにある。

傍からは、プーチン氏は領土拡張、帝国の復活、縦割りの強化などを目指す、ずる賢い戦略家に見えてしまうが、本人は戦略など信じていないようだ。

プーチン氏は“反動的”政治家である。という意味は、まず第一に、むしろあらゆる政治活動よりも、反応を好むリアクション系だということだ。外国あるいは国内から伝わってくるインパルスに対して答えるのみで、それは問題の源や特徴をはっきりとつかめるから、正しく反応できて間違えることがない。

もうひとつ、反動には、本来の変化嫌いという意味がある。これはもともとプーチン氏の性質にもとづくものではない。彼は、次第にそうなったのだ。およそ新しい試みはすべて、事態の悪化を招いてしまうという結論にいたって。

「建て終わるまで待ってくれ」 

増大する国際的な乱気流は、何よりも国内の不安定化を生み、それが強まるという理由で大統領を不安にさせる。多くの前任者やロシアの保守派のように、大統領はロシアが安定的かつ確実に発展するためには時間が必要で、民主主義を求める人々の無計画な流れにすべてをゆだねるのは時期尚早だとくり返し言っている。

選挙戦のさなかの2月にプーチン氏は会合で、こんなことを言っていた。ここ数年で、ロシアはソ連崩壊後の1990年代に崩れた国の骨格を立てなおしたが、今はそれを固定する時期に来ていて、「ドストロイカ(完工)」までの時間が必要だ、と。

ソ連のゴルバチョフ書記長(当時)が考えだしたペレストロイカ(再建)ではなく、ドストロイカという言葉を選んだことは興味深い。ペレストロイカという言葉は、多くのロシア人にとって崩壊の同義語なのだが、今回は注意深く建設を終わらせるというわけだ…。

処方箋は誰にもない 

プーチン大統領は、自身の返り咲きを国民が抗議行動で迎えたことを、西側諸国による扇動のみならず、社会に起きている変革の証だということを理解している。

しかし、プーチン氏は、変革はまだ時期尚早だという理由で、反体制派は間違っていると、心から確信している。そして、ドストロイカまで待ってほしいと願っている。

ロシアの歴史をひもとくと、保守派には、時間の猶予は、まったく与えられなかったのが常だ。何かが起こると変革の力に押されてしまい、保守派の努力は無駄に終わった。変革が良い方向に向かうことはほとんどないが、変革が起こっている時は、誰もそんなことは考えない。

プーチン大統領は、問題の処方箋はないままに、周囲の危うさと脆さを感じながら、政権に戻ってきた。とはいえ、戦略がないからといって、大統領を避難することはできない。戦略は、今のこの予測不可能な世界では意味を持たないので、誰ひとりもっていない。

ヨーロッパの経験は、熟考され理想的であると考えられた構造は、トランプ・ハウスのようにいとも簡単に崩れてしまう恐れがあることを示している。現実主義者で保守派のプーチン大統領は、現在起こっている事態の深刻さをかなり冷静に評価しているが、いや増す難問に対して答えを見いだしてはいない。

*完全版(ロシア語)