「モスクワにハト小屋を再建したい」

=ヴァレーリイ・シュストフ撮影/ロシア通信

=ヴァレーリイ・シュストフ撮影/ロシア通信

モスクワっ子のゲオルギー・グリゴリャンさんは、郊外に土地を購入し、ハトの飼育を始めた。その数すでに800羽にものぼる。近い将来、それらのハトをモスクワの街中や公園に放つことを、モスクワ市政府に提案したいと考えている。

「私が10歳くらいの頃、兄が袋を持って家に帰って来たのですが、その中に生き物がいたんです。子犬かと思ったらハトだったんです」とグリゴリャンさん。当時グリゴリャンさんは地下鉄「ノヴォスロボツカヤ」駅に近い、モスクワ中心部に住んでいて、屋外に兄と小さなハト小屋をつくった。

その後引っ越しをすることとなり、モスクワ州の知り合いのハト飼育業者に一時的に預けることにした。グリゴリャンさんの家族は3年前、モスクワ市郊外に土地を購入し、真っ先にハト小屋を建てた。「預けておいたハトを業者のところに取りに行くと、30羽ほどになっていましたが、鳥は繁殖が早いので、他の種類のハトも購入しました」。

20世紀半ば、ハトはモスクワのシンボルのひとつだった。1957年に行われた第6回世界青年学生祭典では、シンボルとして使われた。モスクワが平和の街であることを、外国人に印象づけたかったソ連政府は、たくさんの白ハトを空に放つ決定をしたが、放たれたハトをモスクワで見つけることができず、次にハト飼育の発展という課題を課した。政府の努力により、モスクワのハトは1年で3万5000羽まで増えた。時とともに、モスクワっ子のハトへの情熱は消えていった。

ダーチャで羽飼育

グリゴリャンさんは建築家を目指して勉強しており、建設ビジネスも手掛けている。ハト小屋はルブリョフカの別荘地である「ゴルキ8」に位置し、清潔なとまり木のある小屋の中には、さまざまな種類や毛色のハトが800羽いる。

グリゴリャンさんによると、真剣にハト飼育をしようとすれば、高額な趣味になってしまうという。1週間でハトたちは穀粒を4袋もたいらげてしまうし、薬、ビタミン剤、獣医の定期検診などにも多額のお金がかかる。昔からハト飼育をやっているお年寄りの多くが、生まれたハトを売って、残りのハトの飼育代にまわしている。優良種のハトは、モスクワで1羽1000ルーブルから3000ルーブル(2500円から7500円)ほどで売れる。

グリゴリャンさんは1週間に何度か別荘に来てハトの世話をし、不在の時は隣人のニコライさんに頼んでいる。世話のお礼として、100羽ほどのハトをプレゼントした。グリゴリャンさんとニコライさんは定期的に、ハトの飛距離を競う競争をする。“選手”のハトは特別なエサ療法とし、余分にエサを与えない。

モスクワの都心に、首都に住む人にはめずらしい趣味の持主がいる。彼が鳩を飼って、もう70年近くになる。=ユリア・ベローヴぁ撮影

ハト飼育業者クラブ「平和のハト」の競争大会の審査員を務めるミハイル・コルジコフさんは、ソ連時代でもモスクワにハト小屋を立てるという決定を行うのは簡単ではなかったと話す。2012年7月、セルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長は、ハト小屋を建てる土地の手続きを簡易化し、設置許可書の発行を無料にするよう提案したが、コルジコフさんによれば、モスクワには建てるスペースがあまりないという。

ハヤブサから何度も逃げる飛行術 

グリゴリャンさんはハトをよく手懐けている。ハト小屋に近づいて上のフタを開けると、ハトは外に飛び出し、グリゴリャンさんが口笛を吹いてモップを大きく振りまわすと、空高く飛んで行く。ほぼすべてのハトに闘技や遊びができ、空中で飛ぶ向きを変えたり、頭から回転したり、尾を使って滑降したりする。

グリゴリャンさんによると、家族ひとりひとりにお気に入りのハトがいて、母親のエンマさんは仲間のハトが全羽戻るまでハト小屋に入らない、責任感の強いトルコの種類の白ハトが大好きだ。グリゴリャンさんのお気に入りのハトは、イランの種類に属しているハトで、胴体が白く、頭部が黒く、足が羽でフワフワしている。

「足に羽のあるハトが好きです。私のお気に入りのハトは美しく飛ぶし、ハヤブサから何度も逃れたりして、運も良いです。あのハトと私は性格的に似てる気がします」とグリゴリャンさんは説明し、次のような不満も述べた。

「モスクワの多くのハト小屋が、ソ連時代に建てられた鉄製の古いものなんです」。また、駐車場などの建設で、ハトがどんどん追い出されていく。グリゴリャンさんは、モスクワの公園や街中にロシア・ビザンチン様式のハト小屋を建設し、モスクワのハト飼育業者に愛するハトの世話をさせればいいと考えている。

*元原稿