エカテリンブルクで工業芸術展開催

=タチアナ・アンドレエヴァ撮影

=タチアナ・アンドレエヴァ撮影

第2回ウラル工業現代芸術展には、ロシア、フランス、ドイツ、アメリカ、ブルガリアなど、30カ国から数十人の芸術家が結集した。芸術家たちは、「地域の工業化とその現代文化との相互作用」のテーマのもと、ロシアで最も古い工業地区のひとつにある工業施設を、見事にアートな世界に変えた。

「ウラルトランスマシュ」工場、ペルボウラリスクの鉱山設備生産工場、ニジニ・タギルの博物館・自然公園、ネヴィヤンスクの歴史・建築博物館、国立ネビヤンスク歴史・建築博物館、ウラルの大手印刷所、エカテリンブルク中央スタジアムなど、スベルドロフスク州の10カ所ほどがアートの会場となっている。アートの10分の3が集められ、最も広い会場となったのが、敷地の半分が今日使用されていない印刷所「ウラリスキー・ラボーチイ(ウラル労働者)」だ。どの工場も稼働してはいるものの、空いたスペースがある。

工場施設をそのままアートに 

中央ウラル地方には、閉鎖企業や秘密企業がいまだに多く存在するため、会場に選ばれたのはあくまでも関係者が合意した場所のみとなっている。 開催1週間前から、芸術家らは創作活動に集中し始め、従業員のように、工場を歩きまわり、つぶさに観察してきた。

「ウラルトランスマシュ」の工場では、エカテリンブルク・オペラ・バレエ劇場が、「現代の振り付け、電子音楽、クラシック音楽、実用芸術、工場建築の融合」をテーマとしたバレエの公演を何度か行い、工場の従業員も参加する。

専門家は、9月13日から10月22日までの開催期間中、6万人から10万人が来場すると見込んでいる。高尚な芸術に触れたいと希望する人は多く、来場して作品を見ながら感動している。

ゴミかゲージツか 

出展者のひとりである、ブルガリア人のネトコ・サラコフさんは、空の段ボール箱を山積みにした作品を披露していたが、一見「これはゴミか、それとも未完成の作品か」と思ってしまう。実際には、これは「政府高官など、誰かにしたいことはすべて、この段ボールにぶつけてください」という、大きな作品の一部である。

トルコの芸術家、クトルク・アタマンさんは、40個のテレビを集め、すべての画面にトルコのスラム街に住む人たちへのインタビューを映した。

エカテリンブルクの住人、ウラジーミル・セレズニョフさんは、最近行われた選挙のスローガンを集め、それを個室の壁に書きこんだ。最初は何かが書かれていることには気づかないが、ランプをつけると周囲に急に現れてくる。選挙公約は選挙が行われている時だけ有効で、選挙が終わってしまうと忘れられる、とセレズニョフさんは考えており、ランプを選挙に見立てて、消灯で選挙公約が一気に消えてしまうようにした。消灯後には、壁に赤い蛍光塗料で書かれた、「すべてムダ、すべてムダ」という文字が浮かび上がってくる。

 マチュー・マルテンさん(フランス)

「この芸術展のおかげで、エカテリンブルクの革命のシンボルである白い給水塔を、炎に包まれているように着色するという、初めての大規模なプロジェクトをこなすことができました。これは私のロシアで最初のプロジェクトです。フランスではこのようなプロジェクトは行えないという実感が、時間とともにわいてきます。ロシアでは感動してもらえるわけですから。自分の工房でこれをできたら、わざわざ5000キロも離れた場所からはるばる来る意味はなかったでしょう。フランスにはない街の建築物を、芸術の土台にしたいと思っていたんです」。

 レオニード・チシュコフさん(ロシア)

 「芸術展の来場者がただ作品を見て回るだけでなく、作品の構想から製作までの経緯を芸術家と共有し、多くを感じとってくれると期待しています。芸術家は芸術を生み、不安を感じながらテーマに集中し、新たな視野を開拓しているので、見る人が作品に夢中になり、共同製作者のような感情を抱いてくれたら、とても嬉しいのです」。

 ニコラス・フレイザーさん(アメリカ)

 「初めてロシアに来ましたが、私のまわりの人々の反応に天にも昇る心地です。私のプロジェクトに驚嘆し、心から支援しようとしてくれます。ニジニ・タギルは歴史を大切にする、保守的な街という印象です」。

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