日中問題から露中関係を考える

ニヤズ・カリモフ 

ニヤズ・カリモフ 

尖閣諸島をめぐる領土争いは、日中関係の急速な悪化を招いた。実際の紛争には、むろんいたることはない。両国の取引高は3000億ドルにも及び、中国は日本製品の主要な市場となっているし、日本は中国のメーカーにとって4番目に重要な顧客となっていて、相互投資額は伸び続けている。つまり、不仲の代価はとても高くつくし、両国ともそれをよく理解している。とはいっても、両国の対立に解決策があるわけでもなく、衝突するたびに毎回エスカレートしていくようだ。

つい最近まで、経済的相互依存の拡大は、軍事・政治的対立のリスクをゼロになるまで低下させるという、リベラルな見方が広がっていた。しかし実際には、中国とアメリカの経済的共生は、従来の大国同士の競争のような対立の深刻化を抑えるのに役立っていない。

日中の片方に肩入れするのは危険 

ロシアはどうすべきだろうか。悪化を続け、くり返される対立で、どちらかの側について関与してしまうようなことを避けることだ。

 ロシアと中国は戦略的パートナーだが、日本とは未だに平和条約を締結しておらず、領土問題を抱えている。だから、ロシアは中国を支持すべきだ、という素人的な考え方がある。そして、尖閣諸島をめぐる日中の関係は、南クリルをめぐる日露の関係と似ている―。

 こうしたケースで重要なのは、歴史的、法的正当性などではなく、力関係と政治力だ。そして、誰が実効支配しているか(防衛しているか)、そして、誰が領有を主張しているか(攻撃しているか)だ。

こういう場合は、一方の問題をもう一方の問題の“先例”として利用するのではなく、二国間ベースで解決した方がよい。さもないと、事態はますます紛糾するばかりだ。

アジア=中国ではない 

ロシアは太平洋地域で関係を多角化することに関心を抱いている。なるほど、中国はあらゆる観点から見て、ロシアにとって重要かつ代わりの利かないパートナーで、近い将来もそうであり続けることは明確だ。

しかしながら、アジア=中国ということになってしまうと、ロシアの駆け引きの余地はどうしようもなく狭まってしまう。そして、中国の成長ぶりを見れば、ロシアは中国にどんどん一方的に依存する恐れがある。ロシアはアジア外交で、ことあるごとに中国の顔色をうかがわなければならなくなるが、利益や目的がいつも一致しているわけではない。

中国に依存するリスク 

国連安全保障理事会のイラン、リビア、シリアの問題で、ロシアと中国が見せた共同歩調は、たしかに、非常に価値のある協力関係の一例だが、これには一つの留保がつく。

中国は、ロシアにとって比較的重要度の低い問題(中東は重要だが、死活的な利害はない)ではロシアに追従しつつ、中国の利益に直接的にかかわる問題を安保理が取り上げた場合、ロシアが中国に従うだろうと期待している。それは北朝鮮問題でも、中国周辺の海をめぐる対立の激化でも、同様だ。

常にフリーハンドが必要 

そうなると、ロシアは、自国の外交のフリーハンドを狭めてでも、中国側につかなければいけなくなる。だが、台頭する中国とうまくバランスを取るためにフリーハンドを確保しておくことは、近々焦眉となるだろう。

自国の優勢を証明する必要性に追われ、日本やアジア地域の他の国に対して形式上の義務を負っているアメリカと違い、ロシアは今のところこの地域では自由だ。

ロシアは、国力や発展のテンポでこの地域の他の大国から遅れているが、このフリーハンドのおかげで、それを埋め合わせることができる。

しかし、こういうフリーハンドをうまく使うのは難しい。太平洋地域の隣国に対する抜け目のない外交と、ロシア東部の経済的、政治的、軍事的な力の増大という2点の組み合わせを要することになる。ロシアは、20世紀には、対西側の政治に能力を活用していたが、今日は頭脳を対東側、すなわちアジアに向けなければならない。

フョードル・ルキヤノフ、ロッシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)への特別寄稿