輸送、観光でも有望

=タス通信撮影

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8月下旬、バトルクリーク(米国)の空はカラフルな紙吹雪が撒き散らされたようだった。第20回熱気球世界選手権に出場した120チームの世界最高クラスの熱気球乗りたちが舞い上がったのである。

ロシア人パイロットのセルゲイ・ラトィーポフは日本の藤田雄大(3位)には及ばず8位となった。

戦時には軍事役割

飛行船は数々の栄光に輝いてきた。北極を飛行した初めての航空機はイタリア人のウンベルト・ノビレが操縦する『ノルゲ号』という飛行船だった。

第二次世界大戦中、ソ連の飛行船や気球は国境を守り、陸上と海上の広大な領域のパトロールを行った。

ロシアでは飛行船や気球のパイロットは宇宙飛行士より少ない。

お金はかかる

何しろお金のかかるスポーツで、誰もが楽しめるわけではない。気球だけでも3万ドル(熱気球)から30万ドル(ガス気球)もする

ゴンドラや航行通信設備を運ぶための特別の自動車用トレーラーも必要となる。パイロットには航行軌道、陸上の風、着地の目安などに関する地上からの不断の情報が欠かせない。
今春、ロシア最大手の気球メーカー『ルスバル』の社員でチームリーダーのセルゲイ・バジェーノフ氏が飛行時間の国内記録を塗り替えた。12時間半、距離にして約230㌔㍍飛行した同氏によれば「飛行とはかなえられた人間の夢である」。

熱飛行船による飛行距離では、ロシア・バルーン連盟会長でSB(造船銀行)会長のレオニード・チュフチャーエフ氏が世界的な記録をマークしている。同氏は現在、最も歴史あるガス気球レース、ゴードン・ベネット・カップへのロシアチームの出場に備えている。

気球のメッカ

スタニスラフ・フョードロフ氏 

=エブゲニー・ヅ–ジン撮影

ロシアのバルーンのメッカとみなされているのはベリーキイ・ルーキ(プスコフ州)だが、氷の洞窟で有名なペルミ地方の町クングールも名乗りを上げている。ペルミ地方のバルーン・フェスティバルの責任者アンドレイ・ヴェルチプラーホフ氏は「この町は低地にあり、風配図が独特です。レースは大変ですよ」と語る。

会社『アヴグール』の創設者の一人スタニスラフ・フョードロフ氏は、掘削用プラットフォームの部品を北極へ届けることのできる貨物飛行船の建造は有望な分野の一つであると言う。

気球による観光もトレンドとなっている。費用は最低1万6000ルーブル(約4万円)。ロシア・バルーン・クラブのウラジーミル・グラトコフ会長は「毎日飛行できる熟練パイロットはそう多くありません。空の乗り物のうち気球ほど安全なものはないでしょう。何よりも大事なのはプロフェッショナリズムです」と語る。

 

ジュニアを養成

このスポーツの普及を目的に『ジュニア飛行家クラブ』というプロジェクトが立ち上げられた。近い将来、ロシアではバルーンが庶民に身近なスポーツとなり、乗り手も増えて記録も伸びていくかもしれない。

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