プーチン・野田の個別首脳会談 =AP通信撮影
第1に、この会談は、両国リーダー間の個人的関係をさらに強化させる観点から見て、きわめて重要だ。政治リーダーの個人的外交は、一般的に、ロシアにとっても日本にとっても、両国関係を強化する上で、重大な要因になる。日本では、プーチン大統領を、かまびすしい領土問題を停滞状況から前進させる力をもつ人物と見て、今回のプーチン氏との会談には特別な役割が付与された。
黒帯会談
プーチン大統領と野田首相の共通点の一つは、柔道好きということだ。両リーダーは、ともに柔道の段位を有している。野田首相はみずから、このテーマを取り上げ、ロンドンでのロシア柔道選手らの好成績を指摘した(ロシアが3つの金メダルを獲得したのに対して、日本の金メダルは、わずか1個だった)。「日本は、他国の選手に活躍の機会を与えてくれた。ずっと勝ってばかりいると、他の選手たちの興味がなくなってしまうからね」とプーチン大統領はこれに応えて言った。このやりとりによって、会談の堅苦しさがいくらか和らぎ、会談が、多少、形式的でないものになった。
中国を意識
第2に、両首脳は、アジア太平洋地域(APR)での自国の経済的利益の見地から、互いの重要性を確認した。プーチン大統領は、昨年300億ドルに達した、両国の商品流通の順調な伸びを指摘した。
日本もロシアも、地域のマクロ経済全般の観点から、両国の商業経済交流の役割を高く評価している。中国の経済、政治、軍事的台頭を背景に、地域の勢力バランスが急変しているが、活発に発展している露日関係の経済関係は、重要な地政学的意味ももちつつあるからだ。
3つの経済文書調印
第3に、会談は、経済協力のさらなる発展のための具体的な成果もあげた。サミットでは経済分野の3つの重要な文書の調印が行われた。それは、両国の水域が隣接する地域の海洋生物資源の密漁対策に関する協定、天然資源とエネルギー産業に関する、露国営天然ガス企業「ガスプロム」社と日本代表の相互理解(ウラジオストクにおけるガス液化工場建設プロジェクトのこと)についての覚書、そしてクラスノヤルスク地方における、総額35億ドルにのぼる木材化学コンプレックス(複合施設)建設の契約だ。
領土問題
第4に、会談は、デリケートな領土問題に関連して注目されている。日本の野田首相は、協力を進めるには「両国民の国民感情への配慮が必要だ」と指摘し、「双方が、領土問題の最終決着の必要性を確認」し、「双方が受け入れ可能な解決策を、平穏かつ建設的な雰囲気のもとで見つけねばならない」と強調した。これに対してロシアのプーチン大統領は、「世論を刺激せず、静かな雰囲気のもとで問題を解決したい」との意向を表した。
イタル・タス通信によれば、双方は今年中に領土問題に関する外務次官級協議を行うとの合意に達した。プーチン大統領は、野田首相が今年中にもロシアを公式訪問できることへの期待を表明した。この訪問準備の一環として、10月に外務次官級協議が、11月には外相間協議が行われる。
解散総選挙がらみ
しかし、日本の複雑な内政状況を考慮せねばならない。8月初めに野田首相は、「近いうちに」解散総選挙を行うことを公然と約束した。もっとも、選挙の具体的期日を明示したわけではないが。
多くの人が考えるように、総選挙が実施されれば、すでに今年の秋にも新しい政治家が首相ポストに就く可能性がある。つまり、モスクワ訪問を行うのは、もう野田首相ではないかもしれない。
とは言え、総選挙が行われない可能性もある。与党民主党は、全力をあげて、総選挙を来年に引き延ばそうとしている。ウラジオストク訪問後の記者会見で、野田首相は、12月のモスクワ訪問の約束は、衆議院解散のそれとは全く関わりはないと述べ、プーチン大統領との会談は「内容あるもの」だったと自賛した。
感情論は後退
全体として、領土問題をめぐって思いが鬱積した出発点の感情論は後景に退いたと結論づけることができる。当面の課題となるのは、冷却期に失われた両国関係強化発展のチャンスを補完し、相互信頼の雰囲気を軌道にのせるための、外交官らの昔ながらの地道で根気の要る仕事だ。
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