=Vostock-Photo/ロイター通信撮影
停戦が履行されなければ制裁との新決議案
シリア国内で停戦が履行されなければ、シリア政府と反体制派に対して制裁を課すとする決議案が7月19日に国連安保理で採決に付され、ロシアと中国が拒否権を発動した。
両国は、イギリスが発案し他の西側諸国が支持したこの決議案に、反対の意を表明し、シリア政府と反体制派の政治的対話を促すことを求めた。
反体制派はさまざまな集団から構成され、そのうちの多くが独立していて無統制の状態にあるため、決議案では反体制派も制裁の対象となっているものの、実質的にはシリア政府のみに向けられている。
当初、投票日を18日と予定していたが、西側と露中の歩み寄りを期待したアナン国連・アラブ連盟合同特使の要請で、翌日に延期された。ロシアはすぐに拒否権発動を明言し、中国もそれに続いた。
ロシアのシリア問題への取り組み
国連安保理には、政治的プロセスを期待し、国連の監視団の活動期限を3カ月延長するという内容が盛り込まれたロシアの代案があり、17日に国連で発表された。その日、ロシアのプーチン大統領はアナン特使と会談し、ロシアはシリア情勢の正常化を進めるために、できるかぎりのことをする用意があると表明した。特にロシアは、7月末にシリア周辺国による「連絡調整グループ」の第2回会合をモスクワで開くことを提案した。
それに対して西側諸国は、ロシアが作成した決議案の代案をもとに作業を進めることを拒否したため、チュルキン国連大使はロシアとして国連安保理の投票に代案を持ち込まないことを19日に発表した。また同大使は、安保理での審議で、「安保理で対決を続けるのは、無意味で非生産的だと考えている」と述べた。
米英の非難
アメリカのスーザン・ライス国連大使は、ロシアと中国の拒否権発動について、シリアのアサド大統領は暴力を続けるだろうが、その責任は露中にあると非難した。
「潘基文(パン・ギムン)事務総長にも、アナン特使にも、監視団にも、この情勢に対する責任はない。責任は残酷なシリア政権と、以前と変わらず、その政権に対する断固たる措置を取れない、国連安保理常任理事国にある」とライス国連大使は語り、19日を「安保理のお決まりの凶日」と呼んだ。
またライス大使は、「最初の2回の拒否権発動も破壊的なものだったが、今回の拒否権発動はもっと危険だ」と述べたうえ、国連監視団は非武装なので、アメリカは監視団によるシリア情勢正常化は当てにしていないと付け加え、代わりにアメリカは、国連安保理の枠を超えたアメリカのパートナーとともに、正常化を行う、と結んだ。
イギリスのライアルグラント国連大使も、ロシアと中国の決定に大きな失望感を示し、米国と同様の意見を述べた。
ロシアの反論
これに対しチュルキン国連大使は、西側諸国がシリア国民のことを本当に考えず、自分たちの戦略的、地政学的な課題にしたがって、シリアの武力紛争を拡大させたとの声明を発表した。
「ロシアは、シリア騒乱が始まって以来、絶えず政治的な正常化を目指して活動してきており、アナン特使の任務に重要な支援を行ってきた。そのロシアに対し、西側の国連常任理事国は今日、容認できない声明を発表し、ロシア外交を批判している。そんな批判や、テロ集団を含む過激派を煽る代わりに、シリアの両当事者の対話を促し、シリア情勢の武力紛争のエスカレートを防ぐために少しでも努力をしたらどうだろうか。西側諸国が、シリア国民の利益と何ら共通点のない、地政学的な課題を定めたことで、結果として、騒乱は悪化の一途をたどり、数々の悲劇が生まれてしまった」。こうチュルキン国連大使は述べた。
19日、アサド大統領の宮殿付近で、政権軍と反体制派の戦闘が行われたとの情報が発表された。その前日、首都ダマスカスの多くの地域で、政権軍と反体制派の戦闘が行われたことが伝えられたばかりだった。この状況の中で、ロシアは、自国から軍人を派遣しているシリアの停戦監視団に、30名追加派遣する予定であることが、19日に、プーチン大統領の指令の発表により明らかとなった。
本記事の完全版(ロシア語):http://vz.ru/politics/2012/7/19/589382.html
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