ロシアの人工知能

写真提供:PhotoXPress

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チューリング・テストで人工知能の「人間らしさ」を競う国際コンクール「Turing100」が、先ごろロンドン郊外で開催され、ロシア人技術者による開発品が優勝した。

この人口知能技術を開発したのは、ウラジーミル・ベセローフさん。科学ポータルサイトNewScientist.comの編集者で、今回のコンクールで審査員を務めたセレスト・ビーバーさんが伝えた。

コンクールは、イギリスの数学者で暗号解読者、またチューリング・テストの生みの親である、アラン・チューリング19121954の生誕100年にあたる2012年6月23日に、ロンドン郊外にあるブレッチリー・パークで開催された。

チューリング・テストとは、審査員がテスト用インターフェイスを通して、本物の人間とコンピューター・プログラムと、文字で対話し、審査員の質問に対する回答で、相手が人間かプログラムかを当てるもの。プログラムは人間より早く回答してしまうため、その時間差が調整されている。  

コンクールには30名以上の審査員が参加し、人間25名および人口知能5つと会話する。会話は、そのそれぞれと150回ずつ行われ、ベセローフさんのプログラムの回答の29%を、審査員が人間と誤認した。

モルモットを飼う人工知能

今回優勝したベセローフさんのプログラムは、13歳でウクライナ・オデッサ市出身のエフゲニー・グストマン君という設定になっていて、http://www.princetonai.com/bot/にアクセスすれば誰でも対話できる(英語のみ)。

画面の空欄に質問を入力し、エンター・キーを押すか「reply」のボタンをクリックすると、上部にグストマン君の答えが表示される。ベセローフさんがグストマン君に人間らしい特徴と個性を与えたことが、他の参加者とは一味違った、と審査員は説明している。例えば、モルモットを飼っていて、お父さんが婦人科医などだ。

ベセローフさんは年齢の設定にそれなりの意味があると言う。「13歳は物事すべてを認識できるほどの大人でもなく、何もわからない子供でもない、ちょうどいい年齢なのです」。

宇宙、軍事→携帯電話

ベセローフさんは1991年にサンクトペテルブルグのアレクサンドル・モジャイスキー軍事技術・宇宙大学を卒業し、1997年にPh.D.を取得、宇宙機(宇宙船、人工衛星など)制御システム用の人工知能の応用などを専門として、研究員や大学教員を務めた。

1999年から、アメリカのボストンに本社がある「アーティフィシャル・ライフ」(Artificial Life)社のサンクトペテルブルグ支社で、自然言語処理(人間が日常使っている言語をコンピュータに処理させる技術、略称:NLP)を担当し、その後アメリカに渡り、2001年に「プリンストン・アーティフィシャル・インテリジェンス」社をパートナーと共同設立して、独自の人工知能のプラットフォーム(基盤となるハードウェアやOS、ミドルウェアなど)を開発した。

2011年、ベセローフさん率いるチームが開発した技術を、サンクトペテルブルクで携帯・NFC技術(NFC:無線通信の国際規格)、デジタル・コンテンツ配信、電子決済などを手がける「アイ・フリー」(i-Free)社が購入した。

実用化進む人工知能

「アイ・フリー」は、ベセローフさんから購入した技術をOS Android用の携帯アプリEverfriendsに使用しており、iPhoneのSiriの競合品となっている。Siriと同様、このアプリは音声認識技術を使用しており、スマートフォン使用者の質問に答え、さまざまな指令を実行する。

Siriの競合品には、Everfriends以外にも、SaraやEviといった人工知能技術を使用する音声アシスタントなどもある。現在活発に開発を進めている企業は、「グーグル」や「サムスン」だ。

ロシアの人工知能技術がチューリング・テストに合格した例は今回に限らない。2007年に、人工無脳(会話ボット)のCyberloverがテストに合格し、専門家が「社会工学のこれまでにないレベル」と評価している。オンライン・チャットでユーザーと会話したり、対話相手からプライベートな話を聞き出したりすることが「教え込まれている」。

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