=AFP/EastNews通信撮影
4年前、世界経済は未曾有の危機に陥った。地球規模の激震は、程度の差こそあれ、すべての国に波及した。
この空前の規模の挑戦に対して、世界の主要国は、抜本的な新しい対策を打ち出す必要に迫られた。世界のGDP(国内総生産)9割近くを占める主要国の首脳たちが、世界の経済政策を調整しようと、これほどの熱意と能力を示したことはかつてない。世界が出口なき貿易戦争や全面的な保護貿易主義に走ることを防ぎ、国際通貨・金融システムの是正に取り組み始めたことは、重要な点だ。
こうしたなかでロシアはどんな状況にあるだろうか。ロシアは購買力平価で見ると、世界第6位の経済大国で、ここ数年で国の予算・財政システムを強化した。外貨準備高では世界第3位だ。経済成長率は4.3%で、ヨーロッパの経済大国の中で最も高い数字となっている。現在、ロシアの銀行制度は、2008年当時とは異なり、世界金融市場の変動の影響を受けにくくなっている。
しかもロシアは、危険な多額の負債を抱えていない。国民の借金は、2012年4月1日現在で、対GDP比10.6%となっており、ドイツとフランスが約60%、スペインが約87%、アメリカが約92%であることを考えれば、著しく低いことが分かる。一方、ロシアの国債も、G8、G2、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国の新興4カ国)のなかで最も割合が低く、2012年5月1月現在で対GDP比9.2%、一方でドイツ81%、フランス86%、アメリカ104%となっている。昨年は赤字予算から抜け出せただけでなく、対GDP比0.8%の黒字となった。つまり、歳入が歳出を上回ったということを意味する。輸出超過額は1980億ドル(約15兆6000億円)だった。
ただし、好調な石油・ガス市場から得た利益を差し引けば、依然大幅な赤字予算となってしまうことは否定できず、石油・ガス関連以外の部門の赤字額は、リーマンショック以降、最大限に拡大しているのは事実だ。
今回のG20は、不安定要素が増していく状況下で開かれる。我が国は、改革を加速しなければならないこと、それが、露経済が安定的に発展し、資源への依存度を減らした上でも必要であることをしっかり弁えている。したがって、ロシアは、投資環境、ビジネス環境の急速な改善、人材の質的向上など実現するために、邁進していかなければならない。これらの改革は、露政府にとって最重要課題となっている。
世界経済について言えば、銀行関連の問題、投機の規模、ひっきりなしに急落する市場など、世界の金融構造はまだまだ改革が必要とされている。最近の金融市場は、実体経済からいよいよ乖離しており、それがまた不信感と不安定さを生み出して、金融パニックを引き起こしかねない状態だ。
新しい対策が必要なことは明白で、派生証券の流通に対する規制を強化し、新たな金融規制システム「バーゼル3」が確実に適用されるように進めていくことが先決だ。バーゼル3は、国際金融機関の自己資本の量と質を見直し、様々な「空洞化」やバブル化のリスクを軽減しようというもの。新たな準備通貨の形成を促し、世界貿易および投資でのその適用範囲を拡大していくことも、共通の利益になると考える。国際金融機関を改革し、それらの管理における発展途上国と新興国の役割を強化することは、G20が緊急に取り組むべき課題である。
もう猫をかぶるのを止める時期が来ている。世界不況の下での失業をできるだけ減らすために、保護対策の許容可能なレベルについて、本音で話し合わねばならない。ロシアは今年、WTO(世界貿易機関)に加盟し、今後の世界貿易規定に関する議論に積極的に参加する方針なので、我が国にとってこれは特に重要な問題なのだ。ドーハ・ラウンドのこう着状態を打開すべく、ロシアは全力を注ぐだろう。保護貿易主義の阻止が叫ばれているなか、それがより巧妙になってきていることを認めなければならないだろう。保護貿易主義は、例えば、環境規制や技術規制という形でカムフラージュされている。
これらはすべて、メキシコ開催のG20の議題となる。来年開催されるG20の議長国となるロシアにとって、これらの議題は、世界のエネルギーの安全保障問題ととともに最優先課題になる。G20は、信頼すべき会合の場であり続けるべきだが、共同決議が空文に終わり、実施も管理もされず宙に浮いてしまえば、評価は下落するだろう。
G20は、仲間うちの利益しか考えないような、ありがちな利己的エリート・クラブになるべきではない。世界経済が確固たる発展を遂げられるような、公正な規則を作成していくことこそ、G20の存在意義である。ロシアは、メキシコのロスカボスで、以上の事柄をG20参加国に提案する。
(クレムリン公式サイト(www.kremlin.ru)より転載)
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