「プーチン大統領が法案に署名を行う前に、すべての意見を検討の対象にすると考えている」 =タス通信撮影
集会や行進に対する規制に違反した場合の罰則強化に関する下院の審議は、ロシア国会史上初となる真夜中の審議になる寸前であった。数百に及ぶ修正箇所について、野党「公正ロシア」の議員がしつこく攻め立てながら、「イタリア式ストライキ」(「順法闘争」) を行ったことがその理由だ。法案可決を急ぎたい下院は、修正案1件の検討時間を60秒から30秒に短縮したため、12時30分に開始された審議は深夜0時数分前に終了した。投票前に各党の代表が直接意見を述べたが、その中で野党政党は政権与党に対し、国民の怒りを買う危険性を指摘した。
それでも、こうしたことが投票に影響を及ぼすことなく、23時37分に野党の修正審議は終了し、法案は第二読会の投票に送られた。結果は、賛成239名、反対207名で可決された。その後すぐに第三読会も通過し、23時50分に下院が行政的違法行為法典ならびにデモ規制法の改訂案を承認した。
可決された修正法案では、デモ規制に違反した場合の罰則が非常に厳しくなっている。一般市民の場合で、罰金30万ルーブル(約74万円)が科せられる。違反者は義務作業を課せられ、デモ参加者がマスクをすることは禁止され、さらに未許可で一般市民集会や、社会秩序を乱すような「散歩」などによる抗議活動を組織した場合も罰則対象になる。大規模な行動を起して一年に一回以上行政責任を問われた一般市民は、大衆行事の主催者になることはできなくなる。
上院での法案審議はより効率的に進められ、水曜日の午前中に賛成132名、反対1名、棄権1名で可決された。短い審議時間の中で、上院議員は現行法の修正案に賛成の意を述べた。
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領は法案に署名する前に「すべての意見を検討の対象にするだろう」との考えを示した。また、仮に署名を行わないとすれば、他国で一般的に適用されているデモ対策と矛盾するような点が修正法案に見られる場合に限られるとし、「他国とは、同様の法律が適用されているヨーロッパの国のことだ」と述べた。野党によると、「統一ロシア」は6月12日の「ロシアの日」の祝日にこの法律を発効する予定だという。この日は丁度、反体制派の大規模デモが計画されている日だ。
専門家の意見
アレクサンドル・シジャキン(「統一ロシア」議員、法案作成者)
前回の法律改訂版が古くなっていることは、どの党派の議員にも明確なはずです。このような違反に対する規制や罰則適用の規則は、古くて意味を持たなくなってきています。別の法的規制の段階に進まなければなりません。
パーヴェル・サリン(政治学者)
6月12日に計画されている大規模デモに向けられた法案でしょう。一方で、政府の動きにかかわらず、反対派のリーダーは自ら中止の方向に進めています。デモ規制法案をめぐるバタバタで、6月12日までに最終承認されても、発効日はデモ後になる可能性も否定できません。
アレクセイ・クドリン(市民主導委員会議長)
この過酷な修正法案の作成者は、大規模デモの参加者が、第三者の所有物および健康に与えた被害に対し、すでに民事責任を負っていることを考慮に入れていません。さらに行政責任を追加するということは、一つの違反に対して二度の罰則を科さないという原則に違反していることになります。
ミハイル・フェドートフ (大統領会議・人権会議議長)
反体制派が計画しているデモのために、社会に多大な影響を与える法案をかけ込みで可決すべきではありません。集会やデモに対する規制法案の可決により、市民が武器を持たずに平和的な集会を行えるという憲法が脅かされるのであれば、反体制派が過激になるだけです。十分に検討されていない法案は、逆の結果を招きかねません。
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