写真提供:「テリトリー・ルス」
ヤロスラーヴリ近郊の林を走行中、泥沼に四駆がはまってしまい、しばらく動くことが出来なかった。まだ真新しい過激な観光だが、舗装されていない道を走りながら発見するヴォルガ川地域は、実にエキサイティングである事を知った。
「テリトリー・ルス」という小さな観光会社が、週末プランと1週間プランのオフロードの旅を提供している。少人数のグループに分かれて、赤いオフロードジープに乗りこむ。3人の起業家によって2011年に設立されたこの会社は、ロシア人(および外国人)観光客に、ありきたりの大都市以外のロシアを紹介することを目的としている。
セルビア生まれのプロのオフロードドライバー、マルコ・ゼチェヴィッチ(32歳)は、1989年に難民としてロシアに来た。モスクワ大学で生物学を専攻し、卒業後はエクストリーム・スポーツを情熱的に追求した。やがて、投資マネージャーして働いていたレオニード・レオノフ(31歳)と弁護士のイーゴリ・リシュコフ(30歳)と共に、テリトリー・ルスを起業した。
自己資金の数百万円で、スズキのジープ4台とランドローバーのディフェンダーを1台購入し、宣伝を開始したが、最大の課題は集客であった。「インツーリスト(ロシア最大のツアー・オペレーター)の重役と話し、我々が最も恐れていたことが確定的なものとなりました。ロシア人は国内旅行を好まないのです」。
写真提供:「テリトリー・ルス」
最近の世論調査によると、国内旅行に興味があるロシア人はわずか30%で、しかもその大半は、黒海沿いのリゾート地を好む。2011年の人気ランキングトップの観光地はトルコ、スペイン、フランス、イタリア及びチェコ共和国だった。
「おそらく我々ロシア人は、日常とかけ離れた場所を好むのではないでしょうか」とリシュコフは語る。「ソ連時代に自由に海外に出られなかった事が関係しているかもしれません」。
「このようなツアーを企画することは、我々の使命です。ロシアの興味深い文化を人々に紹介します。その際、ただ見せるのではなく、楽しくアクティブな手段を用います。我々のツアーで訪れる場所には舗装された道路がなく、普通乗用車ではたどり着けないところにあります。それでオフロードツアーになるのです」と彼は付け加えた。
さて、我々のツアーは、黄金の輪にある アレクサンドロフとペレスラブリ・ザレスキーという街を訪れた。まず、ラドネジュのセルギウスという泉へ向かった。多くの湧き水は神聖な場所とつながっており、神秘現象の噂が絶たない。木造のチャペルに囲まれているこのような泉には、巡礼者が多く訪れている。
観光客がこのようなところに来るのは稀である。(ロシア正教の教会でかぶられる)スカーフを頭に被った女性が、パステルカラーのガウンをまとい、神聖な水で入浴する。この場所は洗礼に最も適しているとされ、頻繁に洗礼が行われている。
数時間後、古都アレクサンドロフを訪れた。1581年、激怒したイワン雷帝が後継者の長男を殺害した場所である。18世紀の工場を改装して造られたレストランで昼食をとった。
翌日はペレスラブリ・ザレスキーをまわった。ペレスラブリ・ザレスキーはプレシェィェヴォ湖のほとりにあり、エフドキア姫がモンゴル軍から逃れた場所として有名である。伝説によると、姫は船で湖の中央へ逃げ、霧に囲まれてその姿を見失ったモンゴル軍は、怒りに任せて街に火をつけた。その数世紀後、ピョートル大帝はこの湖で、ロシア海軍史上初の船を造船した。
ツアー中、木造の家が建つ情景豊かな村で休憩をとる。宿泊地は、小さな馬農場、風車小屋付きのレストランや小さなコッテージなどである。
現在、「テリトリー・ルス」は4つのツアーを提供しており、いずれも英語に対応している。珍しいルートをたどって、教会や修道院などの歴史的建造物を訪れることが出来る。 ロシアの美しい森や湖を発見することもできるので、モスクワのハイカラだがストレス満載の生活を忘れるにはうってつけだ。
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