足下の傑作

目の錯覚と視角を利用しただけで、おもしろい効果が得られる。そうした効果を利用した立体グラフィティのフェスティバルが、モスクワのバブシュキンスキー公園で初めて行われた。アスファルトに描かれたユニークな絵が、本物のように生き生きとしている。「この絵が現実になればいいのに」と思わず言ってしまいたくなる。アーティストに必要なのは、粉チョークと砂糖を水と混ぜるだけだ。砂糖は絵の具に粘性を加える目的で使用される。これがないと、アスファルトに描かれた絵がすぐに消えてしまうのだ。

「水が蒸発して絵の具が乾燥すると、砂糖が結合物質としてアスファルト上で色素を保ちます。こすれ、風、また水に対する耐性が増すのです」とアーティストのフィリップ・コズロフさんは説明する。

アスファルトの立体アートは、ストリート・アートの一種だ。遠近法と目の錯覚で立体的に見えるが、一定の視点からしか効果が得られない。左右に少しずつ動きながら立ってみると、目の前には縦に伸びた荒い絵があるだけで、現実らしさは消えてしまう。

モスクワのアスファルトが立体グラフィティ・アーティストのキャンバスとなり、春の数日間、バブシュキンスキー公園の小路を自由に支配できる。

作品がブログで紹介されたこともある、ストリート・アートの世界で有名なニコライ・アルンドトさんが、特別ゲストとしてヨーロッパから参加した。テレビを通じてまさにアスファルトから世界に飛び出した同氏は、誰でもこのような絵が描けると考えている。「チョークや絵の具を買ってきて、描き始めるだけです」と説明する。

=ニコライ・アルンドトさんの有名な虎の絵

ドイツからフェスティバルに参加した、同じく特別ゲストのマンフレッド・シュタデルさんの作品は、スケールの面で大きく異なる。道路を丸ごとアートに変えることもある。シュタデルさんは友人と協力し、地球上の陥没した水たまりから飛び出しているイルカの絵を、二日間で仕上げた。

「ヨーロッパでこのアートの人気が記録的に高まっています。アメリカやアジアからも見たいとの声が上がっています。どこにでも行きますよ」とシュタデルさんは語る。

道に描かれる芸術は、多くの人々を引きつける。立体アートの一つひとつが小さな世界をつくりだしているのだ。立体効果に驚くだけでなく、自分がそのおとぎ話の一部になって撮影することもできる。写真を個人のアルバムに所蔵したり、ネット上に掲載したりすることもできる。傑作は足下に現れることもあるのだ。