漫画文化をロシアにも

=タチヤナ・シュラムチェンコ撮影

=タチヤナ・シュラムチェンコ撮影

「漫画コミッション」のミッション

不人気の理由

数年前まで、ロシアの漫画産業については何も語られない状態だった。漫画本そのものがほとんどなかった上、漫画という独立したジャンルすら確立されていなかったからである。

「世界でもっとも読書する国民」の代表的存在であるロシア人は、漫画の読み方に慣れていないため、絵と文字を一つのものとして見ることができない。一言で言えば、ロシア人は漫画本を「読まず」、絵を「見ている」だけにすぎない。

また、絵で紹介されるストーリーは、多くのロシア人が低級文学とイメージするため、そうしたものに時間を割こうとはしない。このような固定観念を取り除いたり、漫画言語を教えたりすることは難しい。40歳以上の世代の場合は、それはさらに厳しくなる。とはいえ、若い世代(15~30歳)は、このポップカルチャーに徐々に関心を示し始めている。

「漫画コミッション」のミッション

2002年から毎年、モスクワで「コムミッシヤ」国際漫画フェスティバルが開催されている。愛好家のアートプロジェクトとして始まったこのフェスティバルは、次第に意義深い文化イベントに変化し、後の「リスペクト」プロジェクトの誕生につながった。

2009年秋、「リスペクト」の主催者、漫画家、漫画愛好家らが補助金をEUに申請し、許可された。そして同プロジェクトはウクライナ、ドイツ、イギリス、スペイン、ベルギー、その他の国々も広がり、今では辛辣な社会的テーマを扱う漫画のフェスティバルとして、世界中で輪番開催されている。

「このプロジェクトは主に若者を対象としています。社会的緊張を暴力で表現しようとしがちなのは、若い世代であるからです。漫画家は文章、絵、意味を融合させる存在として、若者に肯定的に受け止められているので、社会問題について対話するためには、漫画が理想的な表現の場となるのです」と主催者は説明する。 

 

2012年のミッション

今年の4月27日から5月27日にかけて、モスクワで「コムミッション」フェスティバルが開催された。「リスペクト」プロジェクトの一環として、22名の漫画家の作品が紹介された。また、外国人の漫画家の作品も特別にロシア語に翻訳された。それぞれの漫画家が自分の身の回りで起きている問題を描いており、多彩で鋭く現実味のある作品が集まった。

先の大統領選挙やそれに関連した社会的動乱を受けて、政権、移民、国粋主義がロシアの漫画家の主要なテーマとなった。有名漫画家のヒフス(42歳)は、魚の殺戮に関する物語を描いた。かつて人間と魚は一緒に暮らしていたが、大統領が人間の不幸のすべてを魚の責任とし、国から魚を「洗浄」する決定を下して、特別な水中収容所に送った、というものだ。

3年目を迎える「リスペクト」の輪番フェスティバルは、既にさまざまな場所で開催された。最近ヘルシンキに戻ったプロジェクトは、5月25日にマハチカラに移動した。

 

ブロガーstixdan」(スティーヴ・ダニレツ、20歳、サンクトペテルブルグ在住、ジャーナリズム学部学生)

「ロシアのプロの漫画家は50名ほどしか知りませんが、ロシア全土で探せば、高いレベルの無名の漫画家がたくさん見つかるはずです。残念ながら、彼らは自由時間を利用して漫画を描き、自らを磨いています。他の漫画家たちと同様、本や雑誌のイラスト、映画の絵コンテ、ビデオゲームなどのメディア・コンセプト・アートを描いて生計を立てています。

『アズブカ』、『エクスモ』、『ロスメン』、『AST』などのロシアの大手出版社が現在、漫画に関心を示していますが、出版の方向性はまだ確定的ではありません。大手の場合は、外国でライセンスを受けた漫画を購入することが中心になるため、無名漫画家の完全なオリジナル作品は地下出版レベルでしか扱ってもらえず、ごく少数の人にしか読まれていないのが現状です。

もっとも、出版社の事情も理解することはできます。ロシア人の漫画家の作品を1ページあたり300から400ドルで調達するぐらいなら、既にヒットした漫画を1ページあたり5ドルで調達する方がはるかに得ですし、漫画本の製作には非常に手間がかかります。プロの芸術家が質の良い漫画を描くには、1ページの制作に数日を要しますが、そうしたことが出来るのは、それだけに専念出来るだけの十分な額が支払われている場合に限られます。漫画制作を流れ作業で行うことは可能です。例えば、5、6名の漫画家が一グループになり、交代で毎月漫画シリーズのエピソードを制作すればよいのです。

ロシアに漫画市場が少しでも現れれば、大手出版社は外国の漫画を買い上げ、国中で販売するでしょう。その結果、市場をロシアのオリジナル作品で埋める必要性が生まれ、最終的に大量生産につながるでしょう。

ビジネスはビジネスです。ロシアでは、まだ漫画で利益を得ることが難しい状況です。このジャンルそのものがあまり知られていないのですから」。