=ドミトリー・ディヴィン
今後数年で、ヨーロッパがロシア最大の経済パートナーではなくなるかもしれない。ロシアはこれまで国際関係上、西を向いた姿勢を貫いてきたが、ヨーロッパが戦略的安全保障上の問題でロシアの意見に耳を傾けようとしないため、姿勢を東にシフトさせる代案を模索しなければならなくなっている。世界経済の中心が東へと移行している現状については、専門家の間で幾度となく議論されてきたが、実りある継続的な活動とはなっていない。また、今年9月にウラジオストクで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)や、それに関連する経済の展望すら、西側との経済関係の代案と見なされることはなかった。
だが、ここにきて状況が一変した。EUとロシアの間で絶えず生じる政治的な衝突を背景に、ロシアとアジア各国との対話が重要性を増してきている。ロシアはアジアを静かな無風の入江と考えており、このような関係は今後も維持されていくだろう。
ロシア政府の不満が根底にある対外的な要因以外にも、内部的な要因がある。急成長するアジアの可能性を考慮し、国の将来的な経済戦略を見直していかなければならないのである。西側との対決の中で戦略的な「後衛」の役割を担っているシベリアを活性化すれば、ロシア政府の新たな競争の拠点となる。これは、いかにして投資取引の潮流を西から東へスムーズに方向転換し、シベリアを天然資源の基地のみならず、国の現代化の中心とするかという問題になってくる。
ここ数年、政府はこの方向性に見合った政策二案について、非公式に広く議論を重ねてきた。一つ目の案は極東発展のための国営企業の設立で、二つ目の案は、極東における経済的プロジェクトの発展を管理する特別省庁の設立である。新政府は初めて極東発展省を立ち上げたが、政策実現のための国営企業設立という一つ目の案も却下していない。その目的は、極東地域にロシア第三の経済首都を築くことにある。地理的条件ならびに可能性を元に候補地として挙げられたのは、エカテリンブルグ、クラスノヤルスク、ハバロフスクだ。もっとも、モスクワが政治首都、サンクトペテルブルグが文化首都であることは変わらない。首都機能移転の構想を支持する側は、ブラジル、ドイツ、カザフスタンの例を挙げ、このような政治的決定が、新首都近隣地域すべての発展を大きく後押しした事実を説明している。
だが、ウラル以東に第三の経済首都を構築する利点すべてを踏まえた上で、これが予測不可能な社会的および政治的事象を招きかねない、と警告する専門家もいる。モスクワとアジアの間よりも近い距離に位置する街に首都機能の一部を移転するという案は、近い将来の政府計画にはのせられていない。それでも、ロシアとEUの将来的な関係が複雑になるほど、第二の経済首都の問題をロシア政府が水面下で話しあう機会が増えるのである。
逆に、アジア地域のロシアのパートナーは、あらゆる分野の新しい構想を提案しており、ロシアとの対話を進める心構えができている。アジア諸国はロシアの主権を尊重し、自国の国家体制を手本に見立てて内政干渉してくるようなことはなく、経済提携に政治条件を突き付けてくることもない。ロシアはEU諸国がそれぞれの民主主義を強要しようとすることに、長年不満を募らせてきた。西側がロシアと対等な関係を築こうとしたがらないことは、もはやロシア社会の常識になっている。それゆえに、ウラル以東に省庁の一部を移転するという地政学的な構想を、国民の多くが支持するのである。
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