ヤンデックスがナスダックに上場 =ロイター/VostockPhoto撮影
プログラマーのニコライ・アブカイロフ氏は、モスクワの北西約40キロのゼレノグラード区に住んでいるが、遠距離通勤に嫌気がさし、自宅勤務に切り替えることにした。そして、アメリカの大手ソフトウェア企業からの退社を考えていたインド系アメリカ人2人とベンチャー企業を設立した。
ヤンデックスはロシア最大の検索エンジン。このほどアメリカ・ナスダック(NASDAQ)市場に上場し、約1173億円を集めた。ちなみにグーグルが2004年に上場したときは、現在の為替レートで約1370億円だった。創設者で社長のアルカジー・ボロジ氏(中央の髭をたくわえた男性)の喜びようも当然か。
2007年初め、後にQikとして知られるようになるソフトを開発。携帯電話にビデオをアップロードし、友達がそれにアクセスすることもできるソフトだ。ビデオ電話やチャットで利用できるこのアプリには現在、世界中で1千万人以上のユーザーがいる。
同社は瞬く間に成長を遂げ、2011年1月、スカイプ社に1億2100万ドルで買収された。今日、Qikはゼレノグラードで50人のプログラマーを雇用している。
重要なのは、Qikの成功で、ロシア企業が西側に移転せずにグローバル市場で競争できることが実証されたことだ。
とはいえ、Qikの成功は、パートナー関係にある米シリコンバレーの企業によるところが大きい。この米企業では、25人ほどの従業員がマーケティングや営業を担当しており、「彼らの鋭いビジネス感覚がなかったら、このプロジェクトの成功はなかっただろう」とアブカイロフ氏も認める。
拠点が国内でも成功
これまでロシアは、ビジネス系の人材よりも優秀なプログラマーで知られる国だった。しかし、今は国内に拠点を置く少なからぬIT企業がビジネス的に成功するようになっている。
モスクワに拠点を置くソフトウェア開発会社ABBYYは、文字認識ソフトのFineReaderおよび電子辞書のLingvoによって知られるようになった。IT業界の主要な見本市である今年のCeBITでは、ABBYYは文書・データのキャプチャ(録画ソフト)だけでなく、ビジネスソリューションに重点を置いていた。
露ITの昨年の輸出額。
約30万人がこの分野に従事する。
露IT市場の昨年の成長率。金額にして約1640億円。ソフト開発とネットサービスが原動力。
ロシアのIT企業で最大の成功例は、アンチウイルスソフトのカスペルスキー・ラボだ。昨年度収益は6億1200万ドルで、2010年度比14%、09年度比57%の増収。収益の80%は海外で生じる。
露IT業界には他に大手企業が3社ある。ロシア語の検索エンジン最大手Yandex、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のVkontakte(コンタクト)とOdnoklassniki(同級生)で、いずれもロシア語圏が中心市場だ。
照準は国際市場に
しかし、国内のIT市場は、未だに成長著しいとは言えない。
ユージン・カスペルスキー氏に言わせれば、ロシアは「優秀な専門家はあり余るほど生み出すが、成功するビジネスがあまりにも少ない」。
その結果、当初から国際市場に照準を合わせる露ベンチャー企業が多いのだ。
モスクワが拠点のパラレル・グラフィックス社も、事業の大部分を海外で開拓している。ゲオルギー・パチコフ社長は「我々のソフトウェアで可能な経費節約は、ロシア政府の途方もない運営コストの前ではかすんでしまいます。その辺がロシア内外経済の大きな違いなのです」と苦笑する。
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