戦略基本文書に中国脅威論:根拠ないリスク論

 大統領に選出されたプーチン氏の新国家戦略はどのようなものか? その基本文書の一つと目される 『戦略2020』が3月16日に発表されたが、そこには、中国経済の成長がロシアに様々な危険をもたらすと、はっきり述べられている。この種の文書でこれほどあからさまな脅威論が展開されるのは初めてのことで、専門家は首をひねっている。

ウラジミール・ポルチャコフ氏

ロシア科学アカデミー  

極東研究所副所長

『戦略2020』の中国に関するくだりは、中国の発展はロシア経済にリスクを及ぼすとの考えに基づいており、そうしたリスクとして、①人民元の国際化②中国産業の競争圧力③中央アジアにおける中国の立場の強化④世界の「新興国クラブ」における中国の動きの活発化――が挙げられている。だが、私の考えでは、多少なりとも根拠をもつのは一つだけだ。
たしかに、中国産業の競争力はロシアに圧倒的な影響を及ぼしている。しかし、それは中国に限らない。「モスクワ・ニュース」紙によれば、ロシアは食料品の 
45 %、衣料品の 80 %、薬品の 60 %を輸入しているのだから。
こうした状況を克服するためには、自国の産業を再生させなければならないが、今日いかなる国も、機械、設備などのロシアへの供給国として、中国に取って代わることはできない。


問題はロシア自身に

人民元の国際化の脅威は、何の根拠もない。世界的金融センターを創出するチャンスは、ロシアより中国のほうが大きいが、これは誰かの陰謀ではなく、両国の経済の規模と構造の違いによるものだ。
人民元の国際化で誰かが脅かされるとしたら、それはルーブルではなく、ドルとユーロである。
中央アジアにおける中国の立場の強化はロシアの立場の弱体化である、というのも当たらない。中国が「攻めた」というよりは、むしろロシアが「退いた」のだ。
中国が米国と並ぶG2として突出するとどうなるとか、国際通貨基金(IMF)における中国の影響力が増すとロシアが損失を被るとかいった類の議論も極めて根拠薄弱だ。

プーチン氏自身、大統領選挙前に発表した論文で、こう述べていた。「中国経済の成長は決して脅威ではなく、巨大な潜在的可能性を孕んだ呼び水であり、露経済の追い風にすることができる」。
私もそうだと思う。