タチヤーナ・ヴァシリエヴァさん。=フェリクス・ブロエド撮影/Flickr.com
ヴァシリエヴァさんは、2001年にパリのロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールで受賞し、日本のコンサート企画会社と仕事をすることとなった。以来、スケジュールは軍隊マーチのような過密状態となっている。移動の多い生活の中でも、年に数週間は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の団員との共演を行っている。ヴァシリエヴァさんがこの共演を思いついた理由には、冒険心だけではなく、バイオリンやピアノと比べると、チェロのレパートリーはあまりコンサートで取り上げられないことに対する不満もあった。日本ツアーでは、通常の演目に加え、ビオラ奏者による交響楽の演奏も行っている。
タチヤーナ・ヴァシリエヴァ
日本公演コンサート日程
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012」
5月3日 金沢市アートホール「トルストイ」14:30開演
5月4日 東京国際フォーラム、ホールB7 14:30開演
5月5日 東京国際フォーラム、ホールD7 12:15開演
よみうりホール 16:00開演
ヴァシリエヴァさんは、クラシックの演奏でも、日本を含めた独特な世界をつくりあげようとしている。
日本のバイオリン奏者、庄司紗矢香さんと知り合ったことがきっかけとなり、ヴァシリエヴァさんはひんぱんに来日し、日本語も学ぶようになった。両者はブラームス、ベートーベン、ラヴェルなどの曲を演奏し、ヨーロッパの「音楽の都」ベルリンとパリに生活しながら、日本に行くことを決意した。ヴァシリエヴァさんは飛行機に乗る際、モスクワの本屋で購入した日本語の独学書を持ち込むようになり、漢字を1年で200文字以上覚えた。
2011年10月2日に行われたドミトリー・リス指揮のワルシャワ音楽祭では、ヴァシリエヴァさんと庄司さんが「バイオリンとチェロのための二重協奏曲 (ブラームス)」を演奏した。
だが、ヴァシリエヴァさんの音楽への興味はクラシック演奏に限られてはいない。「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭2009」では、ダンサーの勅使川原三郎さんとも共演し、18世紀初頭に作曲されたバッハの無伴奏チェロ組曲と勅使川さんのダンスをひとつの舞台で融合させる独特な演出を行った。リハーサルでは、勅使川さんが録音されたヴァシリエヴァさんの演奏を聴きながら特徴をつかみ、合同のパフォーマンスを構成した。一方、ヴァシリエヴァさんは勅使川さんのダンスを一切見ることができなかったという。「リハーサルは風変わりなものでした。ダンスの動きを見たかったのに、バッハをひたすら演奏するのみでした。終わってから動画で舞台の『無秩序』ぶりを確認したんですが、すごく良くできていました。勅使川さんは天才です」と印象を語った。
両者は、同様のパフォーマンスを来年ヨーロッパで行いたいと考えている。ヴァシリエヴァさんは、自身が最高と考えている日本のホールの音響に羨望の思いを寄せながら、ベルリンに残るべきか、日本に移るべきかを決めかねている。
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