=East News撮影
放射線技術(または放射線制御技術)は、材料に変化や新しい特性を加えたり、分子や原子レベルの構造を分解したり、発見を目的としたさまざまな研究を行ったりすることで、材料や生物系に対する効果を得ることを可能にするもので、それらをもとにして製品やサービスの開発が行われる。
新たな放射線技術(放射線制御技術)の世界市場は、250億ドル(約2兆円)規模にまで急速な成長を遂げ、原子力サービス市場と肩を並べるようになった。「スコルコヴォ」核技術開発センターの業務最高責任者、デニス・コヴァレヴィッチ氏が、科学とビジネスの国際的協力において、ロシアのこの分野における可能性について語ってくれた。
-以前、国営原子力企業「ロスアトム」で発電分野などの戦略的発展に携わっていらっしゃいましたが、その時点で、あまり開発の進んでいない有望な分野や市場が他にあるとおわかりでしたか。
関連技術の市場は、発電市場よりもかなり早いテンポで成長しています。現在、発電市場で利用可能な原子力分野の開発には、500種類以上の製品や技術があります。それらは、優先的に実現化を目指す「放射線技術」の新しい技術基盤と位置づけられていました。
デニス・アレクサンドロヴィッチ・コヴァレヴィッチ氏は1979年モスクワ州トロイツク氏生まれ。2007年から4年間「ロスアトム」に勤務し、長期計画も含めたロシアの原子力分野の改革・開発プログラムの作成を担当した。
-「スコルコヴォ」核技術開発センターの主な活動は何ですか。
戦略的活動は4方向にわけられています。放射線技術、材料の新特性確立技術、技術的に難しい物やシステムの設計技術、機械や新しい電子機器の製造技術です。
-「ロスアトム」ではなく、「スコルコヴォ」センターが「放射線技術」の技術基盤整備を進めているのはなぜですか。
「ロスアトム」は数ある関連機関のひとつにすぎません。巨大な投資をする可能性があることは確かですが、「ロスアトム」はその特権から、企業に数百万ドル規模の支援をすることができません。「スコルコヴォ」は、世界的な大手技術系企業が自分たちのチェーンに取り込むような、新しいプロジェクトや企業の創設や発展を支援しています。より多くの企業が参加することが当センターにとって大切であり、潜在性の高いプロジェクトを積極的に支援し、波を起すことが課題です。
-その波を起こすには、どのぐらいの期間とどのような活動が必要ですか。
新しい産業の立ち上げに向けた準備には、海外の実績から判断すると、5年から10年の期間が必要となります。例えば、シンガポールは7年に1回、新しい分野を立ち上げていますが、7年に渡って分析をし、必要な手立てを講じ、すべてを入念に精査しています。こうした意味では、「スコルコヴォ」のもつ可能性とは、「活動を通じた研究」であるということになります。当センターの助成委員会が何らかのプロジェクトに助成金の寄与を決定する時は、何よりも先に申請企業の将来性を見極めます。申請者がある道を進んで障壁に直面し、当センターが長所と短所を判断できるように、現実的な可能性を与えなければなりません。
-シンガポールの実績についてお話いただきましたが、原子力分野の多様化を考えている国は他にありますか。
日本だと思います。福島の原発事故後、以前より差し迫った課題となっているはずです。例えば、チェルノブイリ原発事故後、フランスの国営原子力産業企業「アレヴァ」は、すぐに多様化プログラムを開始しました。
-「スコルコヴォ」の海外提携企業になると、どのような特典がありますか。
第一に、提携先は「スコルコヴォ」の敷地内に短期間で開発センターを設けることができます。第二に、ロシアとの開発において専属提携先になることができます。つまり、「スコルコヴォ」新技術開発・商業化センターのような存在は、ロシアの開発史において前例がないということです。海外提携企業は、ロシア国内で特別な地位を得ることができるのです。
新特性材料:
「炭素樹脂」開発
アルミや鉄鋼などの通常構造の材料と比べ、炭素繊維(炭素樹脂)をもとにした複合材料には独自の特性がある。炭素繊維の耐久性や疲労抵抗性は、鉄鋼より数倍高く、質量は著しく小さい。原子力分野では、ウラン濃縮用遠心分離機を製造する際に炭素繊維が使用される。
-政治的な支援があるからですか。
それだけではありませんが、それもひとつです。現在のロシアにおいて行政の壁とどう向き合うべきか、関税の問題やその他の多くの問題をどう解決して行くべきかなどについて、「スコルコヴォ」には実績と認識があります。当センターは、既存の官僚制度に振りまわされないように創設されました。今は現実的なプロジェクトと新しい提携先が必要なのです。
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