イラン攻撃を回避せよ

元首相エフゲニー・プリマコフ

対イラン攻撃が準備されつつあるとのマスコミ報道をよく目にする。実際、攻撃の可能性はあるだろう。そうした「解決」を一番望んでいるのはイスラエルだ。同国は、アメリカの同意を取りつけるか、米国が軍事行動へ参加せざるを得なくなるのを当てにして作戦を開始する可能性がある。

交渉解決は可能だ

しかし、オバマ大統領は選挙期間中の急激な状況の緊迫化を望んでいない。
イラン攻撃はイラクへの干渉よりも危険な冒険となりうる。イラクに対する武力干渉がもたらしたのは、国の半壊、テロの横行、地域全体の不安定化であった。
では、イラン問題はいかに解決すべきか? 同国の核兵器保有には、ロシアを含む事実上すべての国が反対している。だが、解決は 
軍事的手段でなされるべきではない。中東というガラスの家のなかで石を投げ合うのは危険極まりない。経済制裁も非生産的だ。
交渉による解決は可能だ。交渉では、管理の下で核兵器生産の可能性をなくすことを含め、関連問題を包括的に話し合わなければならない。原子力の平和利用のための条件づくり、経済制裁の放棄、中東和平のプロセスへのイランの参加といった問題、さらには米国とイランの関係正常化も視野に入れるべきだ。
プーチン首相は論文『ロシアと変わりゆく世界』のなかでこう述べている。「ロシアは、ウラン濃縮の権利を含めて、核の平和利用に対するイランの権利を認めるよう提案している。これはイランの核開発全体を国際原子力機関(IAEA)の確実かつ全面的な監理下に置くことと引き換えに行われるべきだ。それがうまくいけば、あらゆる対イラン制裁は撤廃しうる」。

その実現のために、中断中の米、露、中、仏、英、独の6カ国とイランの交渉を直ちに再開すべきだ。

シリア紛争の本質
紛争勃発から1年、その本質がよく見えてきた。
第一に、確かに、反アサド派には政権の民主化を求める人々も含まれてはいるが、大部分は過激派イスラム主義者である。

「アル・カーイダ」が反体制派に与したのは極めて示唆的だ。ヨルダンの「ムスリム同胞団」もアサド政権に対する「ジハード(聖戦)」を宣言した。
ヒラリー・クリントン米国務長官は、シリアでの武力衝突の激化を許すまいとするロシアと中国を「卑劣な行為」として非難した。
だが、その米国は、 憲法に基づいて選ばれたシリア大統領の打倒を目指す闘いにおいて、最も頑ななテロリストたちと同じボートに乗り合わせているのだ。
第二に、シリア国民の大部分が反政府武装勢力に与しなかったのは明らかだ。野党の投票ボイコット呼びかけにもかかわらず、新憲法に関する国民投票の投票率は極めて高かった。その民主的性格も明白だ。
シリアの指導部と反政府勢力の交渉の土台が見えてきたように思われるが、米国と親米諸国はアサド政権の即時退陣を求めている。これまでの教訓は何ら活かされないのだろうか?