世紀の大プロジェクト

=AFP/East News撮影

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常温核融合の実現は化学者の長年の夢だ。これに成功すれば、人類は無限のエネルギー源を手に入れることができる。しかしながら、その道のりは地平線ほどに果てしなく遠い。進めど進めど、目標ははるか先にある。懐疑論を吹き飛ばすべく、ロシア科学センター「クルチャトフ研究所」に向った。そこでは、国際熱核融合実験炉(ITER: International Thermonuclear Experimental Reactor)計画の総責任者である本島修氏と、ロシア側参加者との会合が開かれていた。

本島氏は日本核融合科学研究所の所長を務め、20107月からこの職に就いている。ロシアの専門家と会話できるようにと、若いころにロシア語を学んだ。

「今日では熱核エネルギーは遠い展望ではなく、近い目標になった。我々はそこに到達すべく、努力を続けている」と本島氏は述べた。同氏は「ITER列車は出発した」と表現した。

この計画を進めるアカデミー会員のエヴゲーニー・ヴェリホフ氏も、本島氏の意見を支持する。ここ2年は資金的に「難しい」期間であったが、問題は解決した。EUが今年と2013年に13億ユーロ(約1420億円)の追加配分を行うことに合意したのだ。

フランスのカダラッシュに建設が決まっているITERには、EUやスイスの他、日本、インド、中国、ロシア、アメリカ、韓国と、先進国や新興国など6カ国が参加している。実験炉の多くのユニットやシステムが複数の国の共同開発となり、重要な部分は担当する国がそれぞれに対応する。

ヨッフェ物理工学研究所で開発された独自のプラズマ診断システムも、実験炉に使われる。本島氏とITER機構ロシア支部代表のアナトリー・クラシリニコフ氏が、この合意書に署名した。ITERの新システムは2016年に設置予定で、クラシリニコフ氏によれば、この合意書はシステム製造を「法的に可能にする」ものだ。

国際熱核融合実験炉(ITER)は、水素の同位体である重水素と三重水素の核融合を発電用に使用する、初の大規模な実験である。つまり、太陽で常に起こっていることを、地球上の条件で再現しようというものである。

この問題をめぐっては、国際協議がさまざまな形で20年以上行われてきた。2006年になってようやく、核融合実験装置の建設に関する国際的な合意書が締結された。

カダラッシュの建設は2016年に完了予定で、当初見積もられた総費用は50億ユーロ(約5460億円)だったが、現在はほぼニ倍にふくらんでいる。国際的な計画であるだけに、技術的な問題や組織的な問題など、解決を必要とする問題は、参加者全員が綿密に打ち合わせ、合意が得られてきた。そのため、ITERの建設完了や実験開始の時期に遅れが生じている。

本島修氏によれば、最初のプラズマは2020年に得られる予定だ。また、重水素・三重水素燃料は、2027年に稼働が始まる予定となっている。すべてが計画通りに進んだ場合、カダラッシュの実験炉が500メガワットの発電を行えるようになる。

ITER国際機構の理事会の予測では、核融合発電所が建設されるのは、今世紀半ば以降になるだろう、とのことである。

国際熱核融合実験炉(ITER)計画について

ITER計画は、無限のエネルギー源を生みだすことを目的として、さまざまな国が協力参加しているプロジェクトである。核融合燃料からは、同量の有機物を燃焼させた場合に得られるエネルギーの1000万倍、ウランの核分裂で得られるエネルギーの100倍のエネルギーを得ることができる。

核融合炉

横断面の炉の寸法は30m。プラズマ閉じ込め用チャンネル・ユニットのある部分がもっとも大きく、全体の寸法は12 x 8 x 8メートル、重量は600トン。磁気部品の重量は200トンから450トン。ITERのすべてのシステムを冷却するのに、一日33000立方メートルの水が必要となる。

温度

プラズマ閉じ込め装置用として、ITERの構造素材は15000万度の作業温度が計算されている。

公式

 ロシアで行われるITER関連事業は、国営企業「ロスアトム」に発注されている。