ロシア絵本を日本に

夫婦でネット古書店を運営する村上麻子さん(左) =吉村慎司撮影

夫婦でネット古書店を運営する村上麻子さん(左) =吉村慎司撮影

 少しくすんだ色づかいのウサギ、キツネなどの横に、しゃれたフォントのキリル文字。日本のネットショップ「ふぉりくろーる」は、オークション・サイトを通じてロシア・ソ連の絵本を販売している。

 1970年代から80年代の絵本が多く、出品リストには、日本でも有名な「おおきなかぶ」(ウクライナ)などのほか、世界の有名作品のロシア版絵本がずらりと並ぶ。1冊1500円前後と、レア商品としては手頃な値付けだ。固定ファンも増えて業績は順調に伸びており、事業開始から3年目に入ろう としている。

 馴染みの薄いロシア語で幼児に読み聞かせをする日本人がいるのだろうか?「子供用ではなく、自分のために買う 30 〜 40 代の女性が多いようです」と、ショップ運営者の村上麻衣子さん。数年前まで東京大学大学院に在籍し、ロシア文学研究者の卵だった。

 絵本販売を始めたきっかけは、ネットオークションで、ヨーロッパの絵本に混じってロシア絵本に予想外の高値がついていたのを見かけたことだった。そのころの村上さんは、キャリア形成と家事・育児の両立という壁に突き当たり、アカデミズムから離れることを決めていた。仕事をしたいが、フルタイムで外で働くのは難しい。同じころ、夫が脱サラしてネットでの古本ビジネスを始めた。自分でもやってみようと、ソ連時代の絵本をオークションに出品したところ、すぐに海外絵本の収集家が高値で落札してくれた。

「いけるかもしれない—」。
 だが、当初収集家に的を絞って出品し続けたが、売り上げは振るわなかった。そこで思い切って2011年春から段階的に大幅値下げを断行。すると一般の児童書ファンが注目し始め、客数が見る見る伸びていった。

 現在、常時100種類前後の絵本を扱う。豊富な品揃えを可能にするのは、村上さんのキャリアだ。研究者にとって、ロシア語の古書探しは業務の一つ。日本にいながら旧ソ連圏から本を調達するノウハウが、何よりの武器となった。

 在庫が積まれた事務所は、自宅も兼ねている。4人の子供の育児に追われながら夫婦で働く毎日。ロシアに関する知識を事業と人生に役立てる、一つのモデルケースと言えそうだ。