北極旅行に熱い視線

北極のホテル 「バルネオ」は、漂流する氷盤上の数張りのテント =Life/VostockPhoto撮影

北極のホテル 「バルネオ」は、漂流する氷盤上の数張りのテント =Life/VostockPhoto撮影

 「バルネオ」は、極地探検家、学者、そして世界各国からの観光客のための、北氷洋唯一の避難所だ。学術グループを除けば、大部分の人にとって「バルネオ」は目的地ではない。北極点征服の前後に数時間か数日立ち寄る場所にすぎない。

 「バルネオ」には飛行機で行く。そこから北極点へは、スキー、犬ぞり、パラシュート、ヘリコプターなどで、各人各様に辿り着く。 

 

極北の珍味ストロガニーナ

  私たちのアントノフ 72 型機は、ノルウェーのスピッツベルゲン島を飛び立った。無事「バルネオ」に着くと、支配人アレクサンドル・オルロフさん以下が総出でタラップまで迎えてくれる。

 さっそく屋外のテーブルで歓迎のもてなしを受ける。空のドラム缶の上に、ウォッカと、ストロガニーナ(サケマス類やトナカイの冷凍肉を薄切りにしたもの)が用意されている。ここならではの珍味だ。

 

北極点へ

バルネオのデータ

*宿泊費用は、滞在期間により1万~3万ユーロ(約100~300万円)。トイレはマイナス30度の屋外。
*「バルネオ」の名は、某無線技士=極地探検隊員のコールサインに由来。
*2006年にはモナコ公アルベール2世が、「バルネオ」から犬ぞりで北極点を訪れ、昨年は英国のハリー王子がここを視察した。

 ヘリコプターに乗り換えて北極点へ向かう。着陸すると、カメラを持った4人の日本女性がパイロットに続いて走る。現在地が、漂流する氷盤につれて微妙に変化するので、パイロットはGPSの画面に北極点=北緯 90 度を表示させるために、すばやくあっちへ行ったりこっちへ行ったりし、女性たちも、北極点征服の記念すべき瞬間を撮るため、一緒に右往左往している次第。

 ニュージーランドの年配のカップルがクラブを取り出してゴルフを始めたかと思うと、イギリス人のロメオが中国人のジュリエットの前に跪いて求婚している。

 「バルネオ」に戻ると、温かい食事が待っている。サワークリーム入りのボルシチと新鮮な牛肉のハンバーグだ。「肉の保存にとって『バルネオ』は最高の冷凍庫です」と料理人のデニースさんが笑う。

 

ロシアならではの設営技術

  「バルネオ」は毎年新たに設営される。3月初めに2つの小基地が設けられる。ひとつは北緯約 87 度の地点、もうひとつは北極点のそばに。そこへ燃料と共に探査グループが降下、大きくて頑丈な巨氷盤を探し始める。

  氷盤の位置はムルマンスクへ伝えられ、そこへトラクターが空輸される。飛行場が整えられると、クラスノヤルスク市の委員会がやってきて認可後、「バルネオ」設営が始まるという段取りだ。

 建設作業は極めて危険で、他国の専門家も知らない高度な技能を必要とするという。ロシアでは、北洋航路と北極の開発は常に主要課題の一つだ。2007年8月には、ロシアの有人深海潜水艇「ミール」が、北極点の深さ4261メートルの海底に史上初めて到達している。また今年2月のロシア通信の報道によると、露調査隊が南極の地底4キロにある巨大湖に達し、太古の水の採取に成功したという。