ドアが開きます、ご注意ください

ラジーミル・プーチン首相は、不本意ながらボロトナヤ広場との間接対話に乗り出した。彼は彼なりに考えぬき、しかるべきアイデアを用意して対話に挑んだつもりだろう(プーチン首相は大統領選綱領の各条項につき、詳細を説明する3編の論文を発表した ―「ロシアNOW」編集部注)。プーチン首相は、抗議する人びとはより興味深く、給与の高い仕事を望んでいると考えた。あたかも、それまで彼らが望んでいたのは、質の高い教育だけだったとでも言うかのように。当初、プーチン大統領候補は、2500万人分の新たな職場を約束した。そして今度は、「大手」からの擁護、非原料企業への低い税金など、中小企業の関心を買う戦略に出た。だが、私にはボロトナヤ広場に集まった人々が望んでいるのは、よりよい仕事などではないように思われる。正義でも、公正な選挙でも、政治の回復ですらない。実際に彼らが望んでいるのは、社会のエレベーターの扉を開くことなのではなかろうか。社会という階段を、より上に登るチャンスが欲しいのだ。

もしメドヴェージェフ大統領が2期目に進んだなら、ボロトナヤ広場の抗議集会はなかったと確信する専門家がいるのにも、それなりの理由がある。もしわが国の創造階級が真に賢明だとしたら、プーチンはどこにも姿を消したりしないだろうということも、そしてメドヴェージェフ大統領の「別人性」が側近らによって意図的に誇張されていたことも、分っていたはずである。

自己欺瞞は容易に説明がつく。それは、近く何かの変化が起きるという、誰しもに必ずトップへの道は開かれているという幻想にすぎない。面倒な仕事や、長年かかる出世を喜ぶ人はあまりいない。とりわけ、もし人びとに、彼らが華麗なキャリアを約束されるべき最高級の教育の持ち主であると、まったく虚偽の確証が与えられたのであれば、なおさらだ。ところが、今も現政権はこの神話を語り続けている。プーチン首相は、若者の中で大学教育を受けた者の割合が、世界の上位4分の1に入っていることを誇っている。もっとも、現代教育の水準に関しては、もはやここで語る力も残されていない。ロシアの学校に通う生徒たちが自発的に読むであろう100冊の本のことを考えると、微笑んでなどいられない。

ともあれ、抗議する人びとに必要なのは、単なる仕事ではない。彼らにはもう仕事はある。彼らに必要なのは、指導的な高い地位であり、昇進のエレベーターに乗る切符なのだ。彼らは、その扉が12年間閉ざされてきたことを、ひどく心配している。今騒ぎ立てさえしなければ、あと6年の辛抱だとほのめかされようと、彼らはもはやそれをあまり信じてはいない。

実のところ、扉を開けよという要求が出るであろうことは、政権側もすでに選挙前から承知していた。だが、その実行の仕方はかなりシニカルだった。公務員の総数は増えた。しかし、大卒者全員が権力構造に入れたわけではない。約60人の知事が交代になった。下院では大々的な入れ替わりもあった。だが、こうしたすべては、「新人たちが望んだので、受け入れて下さい。あなた向けのその他のポストはここにはありません」という論理で行われた。その結果、新人代議員や知事の多くは笑い者にされ、エレベーターの扉が開かれたことを信じさせる者はいなかった。

かくして政権は、不愉快で困難な岐路にさしかかっている。エレベーターの扉を閉じたままにしておくのは、もうあまりにも危険だ。とはいえ、扉を開けるのもおそろしい。100冊の必読書を、まだ全員が読み終えてはいないのだ。

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