ロシアより葉書に愛をこめて

ロシアは「ポストクロッシング」国際プロジェクトの会員数で、世界第2位を占めている。=タス通信撮影

ロシアは「ポストクロッシング」国際プロジェクトの会員数で、世界第2位を占めている。=タス通信撮影

電子メールの利用者が普通郵便に戻ってきている。「ポストクロッシング」国際プロジェクトはこの一月、1000万枚目の郵便葉書を登録する予定だという。ロシアはこの運動の会員数で、世界第2位を占めている。

  私たちが郵便受けから取り出すのは大抵DMで、手紙や葉書を受け取ることは滅多にない。これは21世紀の今、すっかり定着した状況だ。だがそんな中、201カ国の27万8000人が「ポストクロッシング」国際プロジェクトの会員として、普通郵便で葉書を投函する運動を展開し始めた。ロシアには2万8千人以上の会員がおり、世界各地に既に50万通以上の葉書を送っている。

 「ポストクロッシング」のアイデアを思いついたのは、ポルトガルのパウロ・マガラエス氏。サイトを作ったのは2005年で、当時彼はまだ学生だった。このプロジェクトで受け取られた葉書は2008年には100万枚を記録し、昨年1月には900万枚、そしてまもなく1000万枚に達する。過去6年間で葉書が行き交った距離の合計は530億キロになる。

  モスクワのデザイナー、アリョーナ・ゲラシチェンコさんは、2007年から「ポストクロッシング」に参加している。葉書の相手の最年長は96歳の米国の女性で、最年少はまだ生まれていないアジアの胎児だった(妊娠中の女性が、生まれてくる赤ん坊の名前あてに、「この世界にようこそ!」と書いた葉書を送って欲しい、と依頼してきたのだ)。どちらの女性も、葉書を送る段階ではまだ、アリョーナにとっては知らない人だった。これがこのプロジェクトのユニークなところで、葉書を送る相手はコンピューター上で見つけるのである。

 「ポストクロッシング」のサイト postcrossing.com にはこう書かれている。「もしあなたが葉書を送れば、地球上のどこかに住むポストクロッサーから、少なくとも1枚の返信葉書を受け取ります。エキゾチックな発信地からの葉書は、あなたの郵便受けをサプライズの小箱に変えてくれます」

  プロジェクトの参加者は、サイトから未知の会員の宛先を知る。その宛先に葉書を送ると、相手からの返信葉書がとどき、その会員のIDをサイトに登録する。一度に5枚の葉書を送ることができる。こうしたやり取りに用いられる英語の知識があることが、プロジェクトへの参加条件だ。サイトには、世界中からの葉書がスキャンされて、掲示されている。会員の短いプロフィールも掲載されている。会員たちは大抵、住んでいる場所や仕事のことなど、自分のことを書いているが、中には、文通相手が将来自分の国を訪問する際の必見スポットなどのアドバイスを書く人もいる。参加者には女性が多く、男性は全体の4分の1程度だ。

  プロジェクトの参加者には若い人が多いものの、電子メールのない時代をほとんど知らない世代ばかりではなく、年齢層は様々だ。アリョーナさんは、モスクワで開かれたポストクロッサーの集会を訪れた際、各地から実に様々な会員が来ていることに驚いたという。そこには、バイカーも、おばあさんも、子ども連れの女性も、12歳の女の子もいた。

  電子メールと手書きの手紙は異なるものだ。「電子メールには生命がないけれど、手紙には個人の筆跡があり、誰でもそれを判読しようとする」とアリョーナさんは確信する。

  アリョーナさんはグラフィックデザインの大学を卒業しており、自家製の葉書を作ったこともある。ロシアでは葉書の発行数が少なく、大抵は外国で買うことになると彼女は言い、これでビジネスができないか画策中という。

  一般の人々と異なり、アリョーナさんら会員たちは、年賀カードを送らないようにしている。年賀カードは配達が大幅に遅れる可能性があるだけでなく(通常期なら、葉書は平均3週間で届く)、行方不明になることすらある。アリョーナさんによれば、1年に約15通が行方不明になるという。「葉書を送る前にスキャンします。サイトの統計コーナーで、どの葉書が送られ、どれが届き、どれが行方不明になったかがわかります。行方不明になった葉書を見たときは、悲しくなりました。最もきれいな葉書でしたから、郵便配達の人が手許に残しているのでは、という疑いさえもちました」

  プロジェクトは各国の通信事業にとって、まさしく贈り物だ。オランダの郵便局は昨年、「ポストクロッシング」プロジェクトへの感謝をこめて、「ポストクロッシング」の記念切手を発行している。

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