滑る愉しみ

ロシアの人々はスケートが大好きだ。学生、トップマネージャー、タジク人移民等々、さまざまな社会層の人たちがこの冬のレジャーに夢中になっている。

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  121日、モスクワのゴーリキー記念中央文化公園に、一万五千平方メートルのリンクに人工の氷を張った、欧州最大かつロシアで最も近代的な屋外スケート場がオープンした。このスケート場は春まで営業し、最良のコンディションが常に保たれるという。

 その規模の大きさにもかかわらず、このスケート場はあまり目立たない場所にある。鮮やかなピンク色のパビリオンが入口で、そこに券売所がある。入口の従業員たちは愛想がよく気がきくが、英語を話せる人は少ないので、スケートをしたい外国人は、ロシア語を少し覚えておいたほうがよさそうだ。

 更衣室は暖かく、スクリーンにはテレビ局『ドーシチ(雨)』(オプチミスティック・チャンネル編集部注釈)の映像が映り、リンクには流行りのインターネットラジオ Follow Me の音楽が響く。周期的にスピーカーから流される「当スケート場へようこそ」という丁寧な挨拶や、「女の子をダンスに誘っちゃおう」といった元気のでるフレーズも、心地よい雰囲気を演出してくれる。

 このスケート場は、公園中央の並木道の一部とそれに隣接する何本かの遊歩道に氷を張ったもので、木製の手摺がついているので、初心者もそれに掴まりながら更衣室から近くのベンチまで滑っていくことができる。

 クリスマス・シーズンにヨーロッパ諸都市の中央広場にお目見えするボックス型のものとは異なり、ゴーリキー公園のスケート場は、パリのディズニーランドのアドベンチャーランドを想起させる。リンクの上にはスケーターたちを一望できる木製の橋が架けられ、アイスロードの上には豆ランプの飾りが生い茂る蔓植物のように垂れ下がり、雪に覆われた芝生には華やかなヨールカ(ロシアの新年祭のツリー)が配されている。

 スケート場の設計には、ドイツの『4a Architekten』社と建築事務所『Wowhous』が共同で携わった。どうしてもっと多くのアイスロードを造らなかったのか、と尋ねる私に、従業員のニコライさんは淋しそうに微笑んだ。「アブラモーヴィチは正月明けに規模を拡大する可能性も示唆していましたが、実際にはまだ元が取れていないんですよ」(ロシアのオリガルヒ(新興寡占資本家)であるロマン・アブラモーヴィチは、同スケート場の投資者の一人)。

 それどころか、スケート場は今のところ損害を被っている。「最初の二日間で、280足のスケート靴が盗まれたのです」とニコライさんは憤る。

 オープン後の数日間は、入場料を払うだけでスケート靴が希望者全員に無償で貸与された。善意から行われたサービスだった。モスクワの文化局長でゴーリキー公園の園長であるセルゲイ・カプコフさんは、雑誌『ボリショーイ・ゴーロド(大都市)』のインタビューでこう語った。「私たちはみなさんに楽しんでいただくために、5000足を用意しました。私たちはスケート靴の保証金をいただきませんでした。みなさんの公園であり、そんなことをするのは、はしたないと思われたからです」。

 ところが、客たちはわずか150ルーブル(約3,60ユーロ、入場券の値段)で新品のスケート靴を手に入れる誘惑に駆られ、最初の一週間で500足が紛失した。現在、スケート靴は1500ルーブル(約36ユーロ)の保証金を払わなくては借りられなくなっている。

基本情報

 ゴーリキー公園のスケート場には、アイスホッケー用のリンク、怪我人の救護室、子供用の氷の迷路、熱々の食べ物やグリューワインを出すカフェ等がある(コーヒー : 140ルーブル=3,40ユーロ、グリューワイン :150ルーブル =3,60ユーロ)。毎日午前10時から夜23時までの営業で、15時から17時はメンテナンスのため閉場する。

氷上での遊び方

 屋外スケート場に長時間いたら凍えてしまうと思われるかもしれないが、心配ご無用。グリューワインのほかにも凍えない方法がある。たとえば伝統的な氷上の遊びだ。ここにいくつかご紹介しよう。

「小川ごっこ」

 ペアを組み、二列に並んで手を繋いで上へ挙げる。一人がそのあいだを潜り抜ける途中で、列の中の誰かとペアを組み、その二人は残りの人たちの末尾に就く。それを次々に繰り返していく。意中の相手に近づくにはもってこいの遊びだ。

「蒸気機関車ごっこ」

 縦一列になり、後ろの人は前の人の肩か腰につかまる。蒸気機関車のように、先頭に立つ人がホイッスルを鳴らして指令を出すと、出発進行。みんな一緒に長い列車のようにスケート場を滑っていく。カーブで車両が脱線して、一人あるいは何人かが転覆すると大爆笑。

「魔法使いごっこ」

 二チームに分かれて、どちらかが鬼になる。鬼でないほうは合図とともに四方へ散り、鬼のチームの者に追いかけられ、捕まえられたら「魔法にかかって」その場でじっとする。同じチームの者に触れられたら「魔法がとけて」またゲームを続けられる。鬼のチームが相手のチームの全員を魔法にかけたら交替。

The joy of skating from Russia Beyond The Headlines on Vimeo.