甦るロシア文学の名作 ナボコフ 『カメラ・オブスクーラ』

「カメラ・オブスクーラ」

「カメラ・オブスクーラ」

 『ロリータ』の著者として有名なロシア出身の亡命作家ナボコフが、1930年代にロシア語で執筆した初期の秀作が、この小説 『カメラ・オブスクーラ』だ。ラテン語で「暗い部屋」を意味する 「カメラ・オブスクーラ」とは、暗い密室の壁に外の風景や事物を投影する光学的仕掛けである。裕福だが小心な中年紳士クレッチマーは、映画館の濃い闇のなかで出会った16歳の美少女マグダとの火遊びに、盲目的にのめりこんでゆくのだが、この暗闇と盲目的な愛欲は、やがて本物の盲目や暗い部屋への幽閉という地獄へと姿を変える……。中年男と未成年の美少女という設定は 『ロリータ』と似ているが、はるかに読みやすく、それでいてナボコフ独特の言語感覚や細部へのこだわりを堪能できる作品だ。