ロシアと中国を結ぶ石油パイプラインの開始でプーチン氏= http://premier.gov.ru撮影
訪中の意味するもの
プーチン氏が実質的に大統領に返り咲いて初めての訪問先が中国だった( 10 月 11 ~ 12 日)ことは象徴的だ。中国が超大国となりつつある今、プーチン次期大統領にとっての外交戦略上の主要課題は、今後数十年間の中国との共存モデルを構築することになるだろう。訪中はそのことを内外に示した。
訪中に先立ち、プーチン氏は政府機関紙「イズベスチア」( 10 月 4 日付)で、西欧とアジア(EUと中国)の間にロシアが中核となって旧ソ連圏諸国を糾合する「ユーラシア同盟」構想を打ち出していた。内容と発表のタイミングから見て、これが訪中と連動していたことは疑いない。
プーチン氏は多極的世界についてしばしば語ってはいたが、実は彼の意識はほとんどいつも米欧を向いていた。なるほど、同氏は2000年代初頭から中国をはじめとするアジア諸国との関係を築いてはきたが、これは欧米に対する効果をねらったものだった。「ロシアには欧米の代わりに中国があるぞ」というポーズをとったわけだ。中国は、米国に代わる軍事的、政治的パートナーになりうるし、欧州に代わるエネルギー輸出先になりうる、と。欧米側はこういうポーズを真に受けて苛立つこともあれば、無視することもあった。
ポーズどころではない
今や中国が最大の隣人となり、ほとんど何もかもが中国次第というご時勢になっては、もはやポーズどころではない。今ロシアは、米欧との関係いかんに拘らず、中国と良好な関係を築かないわけにはいかない。
プーチン氏はもちろん中国びいきではないので、この急速に大発展する隣国の脅威はわきまえている。だがアジアには、中国に匹敵するような発展の牽引車が他に見当たらない以上、ロシアが極東地域を開発しようとすれば、中国抜きにはどうにもならない。
ちなみに、ロシアで今盛んに「近代化」の必要が叫ばれているが、リアリストであろうとするかぎり、それは「ロシアにシリコンバレーを創る」といった類の夢ではありえず、エネルギー資源の開発・生産をより効率化し、その輸出先を多様化することだろう。
したがって、ロシアの将来の発展のお手本は、米国や日本ではなく、オーストラリアやカナダのような、資源に立脚した先進国になろう。そして、そうなるためにも、絶えずエネルギー需要が増しており、手持ちの金が沢山ある中国なしでは済まない。
確かに、ロシアが何度も思い知らされたように、中国は実に手強い交渉相手であり、しかも、ロシアの対中外交はまだ歴史が浅い。
今後のアジア外交のひな形となりそうなのが、ロシアから朝鮮半島へのガスパイプライン敷設プロジェクトである。ロシアは、北朝鮮にこのプロジェクトのパートナーになることを提案し、それによって核問題など半島情勢の質的転換を図ろうとしている。
事実上の大統領としてのプーチン氏の訪中は新しいページを開いた。中国との今後数十年の共存モデル構築が、次期大統領にとってほとんど最大の課題となるだろう。中国に対するポーズとしての対西側外交について、評論家たちはまもなく論じるようになろう。
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