おしゃれな一年生=ロシア通信撮影
2009年の「OECD(経済協力開発機構)生徒の学習到達度調査」(略称PISA)の世界ランキングで、ロシアは衝撃を受けた。この年、
65
カ国で
15
歳児を対象に読解力を中心に調査したところ、ロシアは、読解力平均得点で
43
位に終わったからだ。
この結果を受け、メドベージェフ大統領は、学校改革に向けたプログラムを発表、「生徒が研究プロジェクトや創造力を養う活動に取り組むようにする。そうすれば、新しいことを発明したり理解したりする方法を学べるし、自分の意見を表現できるようになる」と述べた。
新指導要領に関する国家アドバイザー、アレクサンドル・コンダコフ氏は「ロシアの学校は未だに権威主義的だ」と指摘する。「教師と生徒が対等な教育形態がま
だない」と、国立高等経済大学院の教育学研究所所長、イリーナ・アバンキナ氏も言う。「教室は、教える意欲と学ぶ意欲が相互作用する場だが、教師はまだ教
室でチームワークを形作る方法を学んでいない」と同氏は指摘する。
小・中学校
(第1〜第9学年)
の改革はこの9月から実施される。生徒は週
10
時間を見学やクリエイティブ活動に費やす。高等学校(第
10
〜
第
11
学年)の改革はまだ策定中だ。だが、こういうコンセプトと真っ向から矛盾しそうな側面も改革案にはある。
教育省は2012年までに教師の給与体系を抜本的に見直す方針だ。給料を生徒数に比例させ、45分の授業1コマにつき、生徒一人当たり
11
ルーブル支給する。一クラスが25人なら275ルーブルになる。つまり、沢山の生徒を教えれば教えるほど給与を上げる、というシステムだ。これが実施されれば、大教室でのマスプロ授業が増えるのは必至である。
それというのも、教師の平均月給は安月給の代名詞で、480米ドル(3万8千円)にすぎないからだ。若い人材は教師になりたがらない。教師の平均年齢は
48
歳で、
5
人に1人が定年を過ぎている。政府は、今年教師の給料を30%上げることを約束したが、事態の根本的解決にはなりそうもない。
今年5月、教師、父母、作家らは、メドベージェフ大統領宛に公開書簡を書き、改革に対する怒りをぶちまけた。ロシア語教師、セルゲイ・ライスキー氏(
41
)は「おまけに変な科目がいくつか導入されたせいで、主要科目の時間が減るんですよ」と嘆く。教師、父母の間では、改革の真意は文教予算と教員数の削減にあると勘ぐる向きが多い。
アンドレイ・フルセンコ教育大臣は「社会の支持が得られない改革案を一方的に断行することはない」と請合う。しかし、教師、父母の改革へのアレルギーは、 金銭面のせいだけではない。改革は、基本的には欧州のモデルに沿ったものだが、教師、父母は、生徒が限られた科目しか選択できず、古典的な一般教育を破壊 すると感じているのだ。改革の行く手は不透明だ。
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