クリミアでの破壊工作

FSBはクリミアでウクライナの破壊工作員を拘束した=

FSBはクリミアでウクライナの破壊工作員を拘束した=

ロシア通信
 ウクライナがクリミア半島で複数の破壊工作を実行しようとしたとして、「ロシア連邦保安庁(FSB)」は非難した。ロシアには、挑発されないようにするという、難しい課題が立ちはだかっている。専門家の考えでは、この事件は長期的な効果を狙ったもので、問題はクリミアではなく、ウクライナ南東部だという。

 ロシアとウクライナのただでさえ難しい関係が、さらにこじれた。FSBは10日、クリミアでテロの準備をしていたとして、ウクライナを非難。ウクライナの破壊工作員はウクライナ特殊部隊の隊員であると指摘した。破壊工作員は2つのグループにわかれ、手製爆弾、弾薬、手榴弾、地雷、武器を持って、クリミアに侵入しようとし、拘束された。FSBは本人たちからクリミアに工作員のネットワークがあることを聞いたという。拘束の際、ロシアの兵士とFSB職員の2人が死亡した。

 ウクライナの行動は「非常に危険なゲーム」であり、ロシアは「このような事象」を看過しないと、ウラジーミル・プーチン大統領。ウクライナ政府の行動は「テロの実践」だと話した。また、ウクライナ南東部の和平を目指す、「ノルマンディー形式」(ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナ)の4者協議(9月、中国)を開催する意味がもはやなくなったと述べた。

 ウクライナ政府は拘束された破壊工作員との関係をあらゆる形で否定しており、今回の一件を「妄想」、「ウクライナに対してお決まりの軍事的脅威」を示す口実と言っている。ウクライナの報道では、ロシア軍が自らロシアFSB国境警備局の隊員に銃撃を加えたとされており、ウクライナの発意で国連安保理の非公開の会議が招集された。

 

「ロシアはウクライナ軍施設を攻撃できない」

 FSBは、拘束された者がすでに供述を始めていることを明らかにしている(拘束された者の中には、ロシア国籍を保有する協力者もいた)。また、標的が観光施設だったこと、TNT換算40キログラムの爆弾を運んでいたことなどが明らかになっている。供述によると、人の近くで爆発させようとしていたわけではなく、リゾートの複数の地点で爆発させ、パニックを引き起こし、「観光に打撃を与える」計画だった。

 2つのグループのうちの1つのグループのみが、ウクライナ軍所有の車両でクリミアに侵入した。もう1つのグループは別のルートを進み、用意された武器集積穴に爆弾を置く予定だった。

 この一見に対してロシアがどのように対処するのかはウクライナ次第だと、ロシアNOWが取材を行った専門家は考えている。「特殊グループが突入しようとしたというだけで、ロシアがウクライナ軍の施設を攻撃できるわけではない。これは国際法に反する」と、上院(連邦会議)国防委員会のフランツ・クリンツェヴィチ副委員長。ただし、ウクライナが同様の挑発を続けた場合には、このような軍事作戦の可能性もでてくると、政治・軍事分析研究所のアレクサンドル・フラムチヒン副所長。

 ロシアは今のところ、厳しい警告のともなう外交的手段と、国内の特殊機関の連携で対応しているのみである。露経済紙「コメルサント」紙によると、クリミア北部にはすでに、装甲車と軍隊が追加的に転進された。

 「対処はとても難しい。世界のどの国だって、自分が破壊工作グループを送っていることを決して認めないだろう。今重要なのは、ウクライナに対して攻撃を行っているといった、ロシアを非難させる口実を与えないこと。ウクライナで銃弾が一発でも飛ぶようなことがあってはならない」と、ロシア国立「高等経済学院」世界経済学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学部長は話す。

 

ウクライナ南東部がらみ?

 専門家の一部は、これをウクライナからの単なる挑発ではなく、周到な長期計画だと考える。

 「これはクリミアではなく、ウクライナ南東部の問題」とスズダリツェフ副学部長。クリミアは別の領域だが、ウクライナ南東部をめぐる争いが、ウクライナにこのような手段をとらせた。

 ウクライナは「ミンスク和平合意」の履行を拒むことを目的として、ロシアとの関係を悪化させる可能性を模索しており、悪化させた後で、攻撃的だとしてロシアを非難する構えだと、クレムリンに近い政治学者である、政治情勢センター研究所のアレクセイ・チェスナコフ所長は話す。スズダリツェフ副学部長によると、ウクライナ政府は南東部を自分たちの管理下に戻すといった一定の成果を選挙前にあげなければならないが、ロシアが南東部のバックにいると着手できないのだという。

 ところが実際には、ウクライナは自国を困難な状況に追い込んでいる。FSBはクリミアで起きた一件を、何日か経過してから発表した。証拠集めをしていたためだ。破壊工作グループのリーダーとされているのは、拘束されたウクライナ国防省情報総局の本職員であるエヴゲニー・パノフ容疑者(39)。「ロシア側には死者が2人いる。ウクライナ人がロシアでロシア人を殺害した。これはかなり深刻なこと」とスズダリツェフ副学部長。

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