イランは「S-300」以外で承諾か

マリナ・ルィスツェワ/タス通信撮影

マリナ・ルィスツェワ/タス通信撮影

イランのムルタザ・サルマディ外務次官は21日、イランが国際仲裁裁判所(ジュネーブ)に起こしていた、地対空ミサイル・システム「S-300PMU-1」5基の納入停止をめぐる、ロシアに対する40億ドル(約4800億円)の損害賠償訴訟を取り下げる協議を、ロシアと行っていることを明らかにした。訴訟問題が終われば、ロシアはすぐにでもイランと新システム「アンテイ2500」の納入契約を結ぶ可能性がある。

 サルマディ外務次官は、ロシアの「スプートニク」通信に対し、現時点で「結果は良好」だと強調した。「契約の変更、設定の必要な新たな価格について、また訴訟取り下げのメカニズムについて話し合った」とサルマディ外務次官。ロシアの国営兵器輸出会社「ロスオボロンエクスポルト」は、この発言について、特にコメントしていない。 

 

納入停止前後の状況 

 ロシアとイランが、総額8億ドル(約960億円)の「S-300PMU-15基の納入契約を結んだのは2007年。2010年に国連安保理決議第1929号(イランへの重火器の売却または譲渡を禁止する措置)が可決されたことを受けて、当時のドミトリー・メドベージェフ大統領がこの決議よりもはるかに厳しい制裁をイランに科し、最新兵器のイランへの輸出を禁止した。契約破棄でイランには前払い金16700万ドル(約2004000万円)を返金し、イランに輸出する予定だった地対空ミサイル・システムをリサイクルした。イランはこれに対し、ロスオボロンエクスポルト社(契約者)を相手どって、40億ドル(約4800億円)の損害賠償訴訟を起こした。

 ロスオボロンエクスポルトを傘下に持つ、ロシアの国営ハイテク工業製品開発・生産・輸出企業「ロステフ」のセルゲイ・チェメゾフ最高経営責任者(CEO)は2月、S-300PMU-1の代わりに、禁輸措置に正式に該当しないアンテイ2500S-300Vの輸出用改変版)をロシアが提案したことを明らかにした。だが、ウラジーミル・プーチン大統領は413日、メドベージェフ大統領令を解除し、地対空ミサイル・システムの輸出を許可。

 この決定に、イスラエルとアメリカはすぐに反発した。イランの希望は、禁輸解除後もなお、S-300PMU-1の受け取り、次に訴訟の取り下げである。これをロシア側は受け入れることができないと、クレムリンの消息筋は話している。「取り引きを成立させるためには訴訟停止が先。これはゆるがない」

 ちなみに、S-300PMU-1は(アンテイ2500とは異なり)、すでに生産終了となっている。S-300PMU-1の製造会社「アルマズ・アンテイ」の幹部は、「重要な契約ではあるが、たった一件のために生産を再度立ち上げようとする人などいないだろう」と話している。この立場を伝えられたイランの軍関係者は、しばらくためらっていたが、アンテイ2500について前向きになっている。イランが地対空ミサイル・システムの受け取りを急いでいることは、ロシアにとっては好都合であった。これは量産品でのみ保証可能だ。

 

アンテイ2500が落としどころか

 理論的には、ロシアはS-400「トリウムフ」を提案することもできる。だがここには2つの問題がある。まず、価格が何倍もする。中国向けの4基は19億ドル(約2280億円)だった。次に、アルマズ・アンテイ社は現在、2020年までのロシア軍再軍備プログラムに関連し、ロシア連邦国防省向けの56基のS-400の生産を行っているため、ほぼフル稼働状態だ。

 イランに5基のアンテイ2500を輸出する契約が成立すれば、イランは3番目のこのシステムの契約国となる。ロスオボロンエクスポルトは、ベネズエラと2013年に「S-300VM2基(納品済み)、エジプトと2014年に2基(納品は2016年予定)の輸出契約を結んだ。

 イランとの契約は、アメリカからの否定的な反応を引き起こす可能性がある。だがイスラエルからの否定的な反応をロシアは予期していない。というのも、すでにイスラエルの要請に応じて、シリアへのS-300PMU-2の輸出契約を破棄しているからだ。

 サウジアラビアのロシア防衛品に対する関心は(特に短距離弾道ミサイル「イスカンデルE」)、ロシアとイランの協力活発化に関連しているのではないかとの声もある。サウジアラビアとイランは緊張関係にあるため、協力を警戒しているのではないかというのだ。

 

*記事全文(露語)

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