ウクライナ南東部で再び激しい戦闘

画像:タチアナ・ペレリーギナ

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今年1月も半ばになろうという頃、ウクライナ南東部の休戦は事実上破られた。これに先立ち12月に、独立を宣言したドネツィク(ドネツク)とルハンシク(ルガンスク)の両人民共和国は、ウクライナ軍が増強され、新たな攻撃の準備を行っていると発表。また、両共和国のスポークスマンは、ドネツィクおよびその周辺地区が砲撃を受け、一般市民が被害を被っていると訴えていたが、その一方で、ウクライナ政府も同様の非難を浴びせていた。

 昨年9月の停戦合意は、一時的に戦闘を緩和し、捕虜と逮捕者の交換を可能にした。だが、今年1月半ばには、双方ともに、もはや停戦は意味を失い、交渉は暗礁に乗り上げたと考えたようで、再び戦闘によって「現状維持」を変えようと試み始めたかにみえる。

 

混沌たる戦況 

 しかし、ウクライナ南東部の状況はかなり混沌としている。南部では、ドネツィクの部隊が、政府軍が制圧している港町マリウポリに脅威を及ぼしているものの、工業都市で人民共和国の首都であるドネツィク市は、半ば包囲された状態にある。前線は北部と西部から同市に迫っており、東部との交通は、いわゆる「デバリツェフスキー突出部」により遮断されている。親露派側は、すでに8月に突破を試みているが成功していない。激しい戦闘は、ルハンシク市の北方でも行われている。

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 ドネツィク人民共和国の指導者アレクサンドル・ザハルチェンコ氏は、すでに「戦略的な大攻勢」の開始を宣言している。「ウクライナ軍は、彼らの支配下にない地域に侵入してきているが、そこを支配することは決してない。一方わが軍は、スラヴャンスクとクラマトルスクを目指し、さらに前進する」。こう同氏は述べはしたが、実際には「戦術的」攻勢をかけているにすぎない。

 例えば、1月12~15日には、ドネツィク市東方にある空港のターミナルから、キエフ側の部隊を最終的に押し出している。もっとも、空港は事実上完全に破壊されてしまっているので、ウクライナ軍にとっては、同市の各地区に攻め込むための「橋頭堡」としての意味しかなさそうだが。

 あと、情報戦にとっての意味もあるかもしれない。空港をめぐる戦いは昨年盛んにウクライナのマスコミに取り上げられたので、親露派による占拠は、プロパガンダ上重要な意義がある。

 「デバリツェフスキー突出部」を突破する試みも、3方向から同時に続けられている。とはいえ、その結果、副次的な意味しかない集落がいくつか占領されただけで、それ以上の成果はなかった。ルハンシク軍も、北方へ進撃しようとしているが、戦略的成果は得られないでいる。

 

双方の真意と今後のシナリオは? 

 いずれにせよ、昨年合意した休戦は終わりつつある。戦闘はすべての戦線でぶり返し、双方ともに攻勢に出ようとしている。目ぼしい成功は、親露派側のものだが、ウクライナ軍も激しい反攻に出る構えだ。

 専門家の見方も割れている。両軍が単に、次回の和平交渉の前に、戦線の凸凹を均し、新たな切り札を手に入れようとしているだけなのか、それとも、政治的正常化の道を完全に見捨ててしまったのか?…

 もし、完全な勝利を得るまで戦うということだと、それは長く苦しい道のりになる。新年前に両軍はそれぞれ、十分な戦力を集中して、各占領地域の防御を十分固めている。もはや、いきなり相手の陣地を突破するような事態はあり得ない――昨年8月のノヴォアゾフスクでの「独立記念日の攻勢」や、9月初めの、ウクライナ軍によるテリマノヴォでの反攻のように(これによってウクライナ軍は、マウリポリを奪われずにすんだ)。

 こういう条件下では、もっともありそうなシナリオは、両軍とも決定的成功を収められず、したがって、もはや攻撃の余力がなくなるまで戦い続け、その後でやっと交渉に戻るというものだ。

 とにかく、次の交渉まで、少なくともあと1ヶ月は激しい戦闘が続き、一般市民の犠牲者がさらに増えることになる…。

 

*ニキータ・メンドコヴィチは、ロシア国際問題委員会(RSMD)の専門家。

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