米中間選挙が及ぼす今後の影響

アレクセイ・ヨルスチ

アレクセイ・ヨルスチ

アメリカの中間選挙が11月4日に行われた。中間選挙は一般的に、ホワイトハウスを押えている政党にとって痛手になることが多いが、今回もそうだった。共和党は下院で218議席から244議席まで、上院で45議席から52議席まで増やした。投票の再確認とルイジアナ州の追加選挙の後、共和党の議席はさらに伸びる可能性もある。

 このようにしてアメリカでは、1党が行政府、別の党が立法府を支配することになった。アメリカ連邦議会の最近の会議では、遺憾ながら、ロシアに対する超党派のコンセンサス復活の傾向が見られた。ウクライナの独立広場や、民族主義的な反ロシア勢力によるウクライナ政権奪取に、熱烈な支持が集まっていた。ロシア政府を厳しく非難していたアメリカの議員のグループはウクライナを何度も訪問し、ペトロ・ポロシェンコ氏はアメリカの上下両院合同会議に招かれ、演説を行った。

 中間選挙の結果、共和党は上下両院で過半数の議席を獲得し、主要な委員会を支配することとなった。共和党は来年初めにも、上下両院で法案を可決しながら、優先的な一連の問題を解決しようとするかもしれない。最優先課題は、医療保険制度改革(オバマケア)の一部取りやめと、オバマ政権が行おうとしている軍事支出と国防総省支出の削減の阻止だ。

 

党を超えて強まる議会の圧力 

 共和党は外交政策において、アメリカの路線をよりハードなものとし、軍事手段を積極的に使おうとしている。

 まずはイラクとシリアでの対イスラム国作戦にアメリカ軍を利用すること。イランの核問題で政治的譲歩をすることに反対し、イランに対して追加的な経済制裁を発動しようとするかもしれない。

 第114議会で反ロシア的立場が強まると考えるに十分な根拠もある。上下両院には今年、ロシアとウクライナに関する法案と決議が30件以上提出された。作成者には共和党員も民主党員もいる。

 民主党のロバート・メネンデス上院外交委員長は9月18日、法案「ウクライナの自由支援」を提出。法案はウクライナ、グルジア、モルドバにアメリカ製兵器を供給できるよう、「北大西洋条約機構(NATO)非加盟主要同盟国」の地位を与えるものだ。この目的のために2015年度、3億5000万ドル(約350億円)を配分することを提案している。また、ロシアのエネルギーに投資を行っているあらゆる国のあらゆる企業に対し、制裁を発動することも法案に含まれている。

 これ以外にも、さまざまな決議や法案が提出されている。それはロシアの軍縮条約違反を非難するもの。2015年度のアメリカの国防に関する法案の一部項目も勘案しておかなければならない。ロシアが「ウクライナの主権を尊重」し、中・短射程ミサイル全廃条約に違反していないことが確認されるまで、大陸間弾道ミサイル「ミニットマン3」450基を起動可能な状態に維持すること、戦略兵器削減条約にもとづいた削減への予算配分を禁止することが定められている。

 

どんな反露政策がとられるか 

 オバマ政権は行政府の特権を維持しようとしていたし、活動が制限されるような厳しい法律に関心を持っていなかったため、これらの法案の採択を支持しなかったし、民主党が上院を管理下に置いていたことで、法案支持者の活動をうまく抑えることができていた。だが共和党が議会の名のもとで決定を行えるようになったことから、状況は根本的に変わった。

 一連の反ロシア措置が法的に固められる可能性がある。これまでの歴史が証明しているように、このような種類の法律は長期的であり、見直しや廃止が極めて難しい。

 次のアメリカ連邦議会の法的活動のリストに含まれる可能性のある措置は次の通りだ。

1.           ウクライナ、グルジア、またモルドバに「NATO非加盟主要同盟国」の地位を与える。これによって無償および優遇条件で兵器を供給できるようになる。

2.           ロシア経済の重要な分野(金融、エネルギー、軍需)に対する制裁を法律で定める。

3.           ヨーロッパのロシアへのエネルギー依存を弱めるため、アメリカ産エネルギーの輸出を奨励する。

4.           ロシアとNATOの軍事分野での接触を止め、協力活動を凍結する。

5.           原子力分野における科学的・技術的協力を禁止する。

6.           ポーランドとバルト三国を中心とする東ヨーロッパへのアメリカ軍およびアメリカ製兵器の配備に、予算を配分する。

7.           ポーランドへのミサイル防衛システム「イージス」の展開加速と、アメリカ東海岸への第3戦略ミサイル防衛地域創設に、予算を配分する。

8.           ロシアによる中・短射程ミサイル全廃条約の違反を名目にした中距離ミサイルの開発に、予算を配分する。

9.           戦略兵器削減条約に定められている戦略核戦力の削減に、予算を配分する。これによってアメリカの戦略核戦力は戦略兵器削減条約に定められる超過パラメータの水準を維持する。

10.         オバマ政権が計画していたアメリカの軍事費削減から、拡大へと方向転換する。

 

 これらの措置は概ね、ロシアとの新たな冷戦開始メカニズムの制度化を目的としている。このように、アメリカの中間選挙と共和党の上下両院での過半数議席獲得は、アメリカとロシアの長期的な対立を招く。議会における新たな勢力配分、すなわち超党派のコンセンサス復活が特に、これを証明している。

 

セルゲイ・ロゴフ、政治学者、歴史学博士、ロシア科学アカデミー・アメリカ・カナダ研究所所長

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