画像:コンスタンチン・マレル
ロシアや他の外国の専門家の多くは、このデモの目的が民主主義的価値観の保護ではなく、中国本土に圧力をかけることだと考えている。
アメリカの国務省やその研究所は、「雨傘革命」を支持している。香港の商業区域でのデモには、国務省が資金援助を行っている「全米民主主義基金(NED)」と、「全米民主国際研究所(NDI)」香港事務所が参加している。NDIは香港で1997年以降、民主的選挙の実施、市民の自由の確保、法律および権利などにもとづく社会の構築に関連する、一連のプログラムを実現してきた。2005年からは青年指導者の教育プログラムも主導している。
このプログラムには、「占領中環」のリーダーの一人、香港大学法学部の戴耀廷(たい・ようてい)副教授が関係していた。他に重要な人物としてあげられるのが、最近アメリカのジョセフ・バイデン副大統領と会っていた、香港民主党の李柱銘(り・ちゅうめい)主席。
中国の王毅(おう・き)外交部長(外相)がアメリカのジョン・ケリー国務長官に、香港での活動支援を停止し、中国の内政に干渉しないよう強く求めた理由には、これもある。
中国は以前から、このような動きに対する準備を行っていた。公安部は5月、国際会議の場で、「色の革命」が現代中国への圧力の要素の一つになったと述べていた。
周到なシナリオ
デモの開始時期は計算されている。2017年の香港特別行政区長官の選挙方式が発表された8月31日に「雨傘革命」が始まってもおかしくなかったものの、実際に始まったのは1ヶ月後の9月末だった。
中国で10月1日は国慶節。この日から大型連休が始まり、本土の大勢の中国人が香港を旅行する。政府を軍事的排除に向かわせないようにしながら、デモを実施する方法を、派手に示した。
なぜ香港の商業区域でデモが行われたのだろうか。その理由はいくつかある。
一つ目に、デモが中国政府に向けられていたため。香港政府というよりも、中国の中央政府に対する抗議である。物価の上昇、汚職、就職先の不足などに関連する社会問題をたくさん抱えている、中国本土の他の都市において、この抗議が同様のデモを刺激するもの、あるいは少なくとも見本にならなくてはいけなかったようだ。
二つ目に、アメリカの政策に参加することを拒めば、負の影響があるというシグナルを北京に送るため。世界有数の金融・貿易中心地としての香港が、いかに世界経済のシステムと結びついているのか、必要とあらばその機能をどれだけマヒさせることができるのか。中国の経済依存、特にアメリカ市場に対する依存は非常に大きい。アメリカとの貿易額は5210億ドル(約52兆1000億円)ほどと試算されている。
三つ目に、香港のできごとが、アジア太平洋地域における中国とアメリカの対立も反映しているため。
「色の革命」の予行演習?
中国は香港のできごとに対して、かなり遠慮している。香港特別行政区の幹部には、デモ隊との問題解決の権限を与えている。これは自分の力に自信があることを証明している。
「雨傘革命」は、6日に落ち着きを見せた。そろそろ学生は勉強を再開する時期であるし、香港政府はデモ隊との対話の用意があることを表明した。仏教連合会は平和的な解決を呼びかけ、タクシーやバスの運転手はデモによって被った損失に関連する抗議のデモを行った。
香港のデモも、「色の革命」が依然として政治的な手段であることを示すシグナルだ。「雨傘革命」が2011年に中国で約束された「色の革命」の予行練習だったのかは、まだわかっていない。
アレクサンドル・イサエフ、ロシア科学アカデミー極東研究所露中関係研究予測センター副所長
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