冬に強いタイヤ ロシアに根づくヨコハマ

「自動車のアイスダンス」=マクシム・ブリノーフ撮影/ロシア通信

「自動車のアイスダンス」=マクシム・ブリノーフ撮影/ロシア通信

 今年の1月下旬。氷点下の気温が続くモスクワの赤の広場で「自動車のアイスダンス」が人々を驚かせた。

 特設野外スケートリンクに日本製スポーツカー2台が乗り入れ、音楽に合わせて走り出した。2台が円を描き、同じタイミングで止まり、またそろって進む。

 見事なショーだが、主役は運転手ではなくタイヤだ。横浜ゴムによる冬用タイヤのPRイベントである。氷上性能の高さに招待客は惜しみない拍手を送った。

 

2年前から現地生産

 日本車に続いて、日本のタイヤメーカーもロシアに根を下ろし始めている。その代表格が横浜ゴムだ。

 2005年に業界に先駆けてモスクワに販売会社を設立した後、08年には現地生産に向け、モスクワに近いリペツク州の経済特区に別会社を設立。12年春から新設した工場でタイヤ製造を始めている。

 販売網は首都圏だけではない。シベリア、極東に至る全土に約800店の契約店ネットワークを持ち、全店が「YOKOHAMA」のロゴを看板に掲げる。ロシアでの販売実績は年間200万本を超えている。

 横浜ゴムがロシアに着目したのは、世界のタイヤ市場を研究した結果からだった。西側からの高級車輸入が急増している、冬用と夏用の2種類のタイヤが売れる、スパイクタイヤが普及していることなど、ロシア市場の特性が見えてきた。

 同社は高級車向けの大内径スパイクタイヤをロシア用に独自開発。ロシアメーカー品と比べて3割前後高価だが、性能が高い上、日本製品というイメージの良さが手伝って、富裕層を中心に売り上げを伸ばした。

 テレビコマーシャルの展開のほか、今年はモスクワ中心部のオクチャブリスカヤ駅に電飾看板を設置するなど、ヨコハマブランドはすっかり定着したといえる。

 リペツク工場では交換用スパイクタイヤを生産し、ロシア国内に出荷している。

 許認可などさまざまな手続きに悩まされたが、同社は特区のシンボル的存在でもあり、州政府が協力してくれた。生産会社、販売会社を合計すると約700人が働く。ほとんどが現地採用のロシア人だ。

 直近の業績はロシア経済の減速、競合他社の増加などで成長が踊り場に来ている様子だ。今後はロシアに自動車工場を持つ日欧の企業に向けて新車用タイヤも販売する見通し。今秋の工場拡充で生産能力は年間160万本と約15%アップした。次なる成長への準備は万端だ。

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