2014年の新語・流行語

12月はその1年を総括する月である。言語学的にこの1年をふりかえってみたい。どのような新語や流行語がロシアの生活にあらわれたのだろうか。
画像:ニヤズ・カリム
画像:ニヤズ・カリム

 交流サイト(SNS)「フェイスブック」には、「今年の辞書」グループができている。その参加者(500人以上)は、社会で注目され、聞くようになった言葉のリストを毎月作成している。

 今年はウクライナ問題という大きなできごとがあったため、「今年の辞書」には地理的な名称も加わっている。具体的には、3月に独立の是非を問う住民投票が実施された「クリミア(Krym - Крым)」、5月2日に多数の犠牲者をだす悲劇的な事件が発生した「オデッサ(Odessa - Одесса)」、ウクライナ南東部の歴史的名称「ノヴォロシア(Novorossiya - Новороссия)」など。

 新しい表現には「クリミアは我々のもの(Krym nash - Крым наш)」がある。ロシアにクリミアが編入された後に生まれた。この熟語はその後くっついて一つの言葉「krymnash - крымнаш」になり、4月には流行語として「今年の辞書」に加えられた。「クリミアは我々のもの」と言う側からすると肯定的な表現であるが、クリミア編入の反対派がこう言うと皮肉になる。ロシア国内でクリミア編入が間違いだったと考える人は、「物価は上昇してるけど、その代わりクリミアは我々のもの(Tseny rastut, zato Krym nash - Цены растут, зато Крым наш)」、「国は不況だけど、その代わりクリミアは我々のもの(V strane krizis, zato Krym nash - В стране кризис, зато Крым наш)」などの皮肉たっぷりな言い方をする。クリミア編入支持者も皮肉でこのように呼ばれる。「彼はクリミアは我々のもの(On - krymnash – Он – крымнаш)」、「あそこにクリミアは我々のものばっかり集まってる(Tam sobralis' odni krymnashi - Там собрались одни крымнаши)」などという表現を普通に聞くようになった。

 

今年の悲しい傾向 

 軽視したような失礼な言葉の出現は、2014年の悲しい傾向であった。

 ウクライナの反政府派(前政権の反対派)は2014年初めに「バンデラ派(banderovets - бандеровец)」と呼ばれた。これはステパン・バンデラという人物の名前からきている。第二次世界大戦中、ソ連に対抗したウクライナ民族主義の指導者である。

 ロシア国内の反政府派に対しては、3月に「国民・反逆者(natsional-predatel' - национал-предатель)」や「第5列(pyataya kolonna - пятая колонна)」という言葉があらわれた。

 ウクライナでは春、南東部の義勇軍の呼び方が人気となった。それは「分離独立派(separatist - сепаратист)」、「綿入れ人(vatnik - ватник)」など。ワトニクと呼ばれる綿入れ上着は寒さから身をしっかりと守ってくれる、冬の温かい上着のことで、見た目がおしゃれではないことから、美ではなく、あくまでも防寒を目的として着用する。これを理由として、あまり利口ではない、教養のない男性も意味するようになった。ウクライナ南東部の住人の間で、この「綿入れ」層が圧倒的に多いと、南東部反対派は考えている。秋にはこの「綿入れ人」が「綿(vata - вата)」と短縮された。この言葉はウクライナ人の多く、特にSNSユーザーにとって、ロシア人の短所を意味する一般的な言葉となった。ウクライナ人の考えるロシア人の短所とは、不精、消極的、自分の頭で考える能力の欠如である。

 

オブラートにくるむ 

 一種の婉曲表現とも言える傾向もあった。それは状況の矛盾、葛藤が隠されている、当たり障りのない言葉である。

 例えば、クリミアに正式に入ったロシア軍は「限定要員(ogranichennyi kontingent - ограниченный контингент)」、また軍服の色から「緑の人(zelenyi chelovechek - зеленый человечек)」と呼ばれた。皮肉な言葉「丁寧な人(vejlivye lyudi - вежливые люди)」は大流行した。丁寧な人とは、ソフト・パワーの一種で、いかなる攻撃性も見せない軍人のことである。言葉が初めてあらわれたのは2月。所属を示す標章をつけていない、覆面、迷彩服姿の武装した人々がクリミア入りした時。3月16日のクリミアの住民投票前、謎の武装集団が地元の軍と交通関連施設を「丁寧にブロック」し始めたと、地元の報道機関は伝えた。誰かはわからないが、とにかく礼儀正しい人たちだったと言われていた。ウクライナでは6月、「ATO」という婉曲語法の略語が生まれた。これは南東部の「分離独立派」に対する、「反テロ作戦(antiterroristicheskaya operatsiya - антитеррористическая операция)」の略語である。ロシアのマスコミは秋、南東部への特別な経済支援を「人道・突撃作戦(gumanitarno-boevaya operatsiya - гуманитарно-боевая операция)」と呼んだ。

 対ロシア「経済制裁(sanktsiya - санкция)」が発動され、この言葉も今年の言葉になった。この制裁には対抗措置がとられ、欧米などの対ロシア制裁を科した国からの食料品輸入が制限された。この対抗措置から、「パルメザン(parmezan - пармезан)」、「ハモン(hamon - хамон)」も流行語になった。パルメザン・チーズとハモンというイベリアの生ハムは、措置によって店頭から消えた代表的な食品。その味に慣れた中流層には禁断症状を感じた人もいた。

 

フェイクな1 

 新語として外来語が定着することも多い。

 数年前、英語圏で「セルフィー(自撮り)」が流行語になった。2014年はロシアでこれが今年の言葉になった。セルフィーを「セビャシカ(sebyashka - себяшка)」などとロシア語に訳そうとする試みもあったが、結局英語のまま定着した。

 2014年は複数の言語圏で同じトレンドがあらわれた。それは英語圏で注目された「究極の普通(normcore)」。無理せずに普通を極めるということである。ロシア語ではこれとは無関係に「普通(norm - норм)」という言葉がよく使われた。若者が特に使っている。すべて順調、すべてうまくいっている、などという意味である。

 また、偽の情報や世論操作を意味する言葉として、英語の「偽(fake)」が2014年の新語となった。何らかのできごとの信頼できる証拠を示すはずの情報やテレビ番組が、現実に合っていない場合に使われた。何よりもウクライナ情勢に関してである。意図的な「偽」のジャンルも広まった。当初は事実にもとづいていた何らかの情報(そのため信用される)が、意図的に歪曲され、それによって情報を受ける側がどんな嘘でも信じてしまう状態に陥ることである。残念ながら、この「偽」が2014年を象徴する言葉であろう。

記事、コンテンツの筆者の意見は、RBTH(日本語版はロシアNOW)編集部の意見と一致しない場合がある。
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