ソチ15日目「疲労」

ミハイル・モルダーソフ撮影

ミハイル・モルダーソフ撮影

そろそろ全体的な疲れが見えてきた。休日でもソチ周辺の観光名所めぐりや散歩にもあまり行かなくなって、休日何をしたかって質問に対する多い答えは「寝てた」。

 昨日の私の朝は、全体的な状態をよくあらわす場面から始まった。バス停でイギリス人の仲間を発見。身につけている五輪ユニフォームは帽子だけで、柵の上に座り、両手でミネラルウォーターのボトルを転がしながら、一点を見つめてる。バスがきても無反応で、動こうともしない。休日の翌朝はパッとしない。

 

おかしな感覚 

 まわりのものすべてがゆっくりと動いているような、おかしな感覚がある。五輪公園に来た人は、最初の数日みたいに施設から施設へとせわしなく動くんじゃなくて、隅をゆっくりと歩いてる。人ですぐにいっぱいになるのは、活動的な娯楽の場所よりも、カフェや休息ゾーン。観客も落ち着いて屋内競技場や山岳部の会場に入場してて、最初みたいに遅れてバタバタしたり、時計を見てあわてたりもしなくなった。

 ロシア人にとって嬉しい言葉「ハリャヴァ(ただで)」に対する興奮度も、少しおさまってきてる。五輪公園のあるスポンサー・パビリオンでは、問題を解くとバッジをもらえるのだけど、最初は皆が殺到して必死に挑戦していたのに、今は入口で「問題を解かなきゃいけないの?隣でホットドッグ売ってるからあっちにいかない?」なんて声が聞こえる。

 五輪関係者もボランティアも、まわりで起こっていることに落ち着いて対処してる。「5人が病気でシフト交替できないって?2人来たから、これでがんばるしかないわね」。誰かを怒らせるような状況も、もうないみたい。

 

疲労のピーク 

 乗り物も遅くなってるし、数も減ってる。「朝4時に果てしなくバスを待たなきゃいけないバス停のアスファルトの上で寝たり、タクシーに20ドル以上も使ったりしないで、五輪公園から自分の枕と毛布に滑りこめ」って自分に大好きな気合いをかけることも増えてきた。

 全体的な疲れは、皆が現状への関心を失ってるってことじゃない。競技では相変わらず、記憶に刻み込まれるような、圧倒される雰囲気がただよってるし、観客席では皆が一体になってる。一斉にあがる悲鳴、同じ感情、同じ心配…これらすべてが、公園の聖火が消えるまでソチで続く五輪から欠くことのない部分。こんな時にふと寝ることも必要だって思いだす。勝利の喜びだけではもたないもの。

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