「出身国」

2015年11月26日 高柳聡子

刊行:2015年5月

ドミトリイ・バーキン 著

秋草俊一郎 訳

群像社

 強烈な印象を残し早世した作家の邦訳がついに出た。収められた七つの短編はいずれも、どこで誰が何をしているのか、明確な時間や舞台設定、人物形象がつかみ切れぬままで読者を片時も甘やかすことがない。にもかかわらず、そのしなやかな文体と言葉の世界に身を任せる心地よさは格別で少しも難解さを感じさせない。

 身体や精神の不具により描写される登場人物たちはしばしば、机や壁との輪郭を失い、彼らの肉体感覚や感情は無機質のモノへと転移していく。極端な逆遠近法で描かれた絵画のようでありながらも、幻想性よりはむしろ強いリアリティを感じさせる。 我々の生(死も含めて)を圧縮すると、こうなるのではないかと思わせるのである。訳者の労に敬意を表す。

(高柳聡子 日本学術振興会特別研究員)

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