『私のいた場所』

 

 刊行:2013年
 リュドミラ・ペトルシェフスカヤ
 沼野恭子編
 河出書房新社

 ジャンルを横断しつつ精力的に創作を続けるペトルシェフスカヤ。その邦訳オリジナルの幻想小説集が出た。
  共同アパートに暮らす小さな人間の具体的な日常の中に意に現れる「あちらの世界」。主人公たちは「生の王国」から死の王国」への移動の途中に居て、「ふたつの王国」の境界で右往左往している。主人公は生きているのか死んでいるのか、分からないままに物語は進む。ふたつの世界の移動手段として、人公たちをバスや列車、時には飛行機にまで乗せ、彼らを死出の旅人とする。
 強烈な幻想性だが、ただに現れるこうした異界の兆しに我々はたことがないといえるだろうか。幻想に生の本質を見い作品群。構成、翻訳も秀逸である 

 

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