ドストエフスキーについて知りたい

文学史およびドストエフスキー研究者のリュドミラ・サラスキナ氏=アンナ・アルテミエワ撮影/ノヴァヤ・ガゼータ紙

文学史およびドストエフスキー研究者のリュドミラ・サラスキナ氏=アンナ・アルテミエワ撮影/ノヴァヤ・ガゼータ紙

文学史およびドストエフスキー研究者のリュドミラ・サラスキナ氏が、ドストエフスキーの誕生日である本日11月11日(グレゴリオ暦)、ロシアNOWの読者の皆様の質問にお答えします。多数お寄せいただいた質問の中で、もっとも多かった質問と興味深い質問への答えは・・・

ドストエフスキー自身には、宗教に対する独自の見方があったのですか。どの作品が一番その宗教的信条を明確に示していますか。Brice Jordan

 ドストエフスキーの宗教観の特徴とは、その信仰心が大きな疑念のるつぼを経由していたことにあります。彼の宗教的信条がもっとも明確に表現されているのは、長編小説『カラマーゾフの兄弟』です。

なぜドストエフスキーが『罪と罰』で反キリストを予言したと考えられているのですか。Carli Vera Navamuel

リュドミラ・サラスキナ

 哲学博士、文学史研究者、フョードル・ドストエフスキーおよびアレクサンドル・ソルジェニーツィンの生涯および作品の研究者、10冊以上の書籍の著者。 「今年の本」(2008年)、「大冊」(2008年、2賞にノミネート)など、ロシアのさまざまな文学賞を受賞している。  

 デンマーク、アメリカ、ポーランドの大学の客員教授を務め、ドイツと日本の教育機関で講義を行った経験をもつ。

 そのような説は聞いたことがないですし、誰がこのようにとらえているのかはわかりません。『罪と罰』では反キリストについてではなく、「良心に照らした流血」で公平性の問題を解決する人々の出現について書かれています。これはロシアで実際に起こりました。

『おかしな人間の夢』にあるのは宗教的観念でしょうか、それとも人道主義的観念でしょうか。Dmitriy Groesbeck

 ドストエフスキーの信仰には人間の偉大なる潜在性が含まれていました。したがって『おかしな人間の夢』では、宗教的観念と人道主義的観念が強固に結びついています。

『白痴』には自伝的なモチーフがあるのでしょうか。dion

 もちろんあります。ただ直接的ではなく、暗示的、また部分的です。

ドストエフスキーは自分の経験を作品に盛り込んでいましたか。精神疾患や法律関連の問題はあったのでしょうか。

 他の作家と同様、ドストエフスキーも自分の経験からアイデアを取り入れていました。精神疾患を抱えたことはなく、精神的に健康でしたが、若い時には強い神経緊張を経験し、昏眠を恐れていました。法律の問題については、革命的サークルに参加したために、1849年に逮捕され、裁判にかけられ、銃殺刑が言 い渡されました。その後4年の徒刑と6年の流刑先での兵役に代えられ、服役して1859年に自由の身になりました。

ドストエフスキーは若いころ、誰にインスピレーションを受けましたか。Nicole G. Landry

 カラムジン、プーシキン、シェークスピア、シラー、ゲーテを夢中になって読んでいました。

ドストエフスキーは臨床心理学を学んだのですか。

 専門的に学んだことはありませんでしたが、直観的に多くを理解していました。

シベリアに流刑された時、デカブリストの女性たちとは会っていたのでしょうか。Sophie Bultingaire

 はい、トボリスクとオムスクの徒刑場で会っていました。デカブリストであるフォンヴィジンのナタリヤ夫人とは文通していました。

ギャンブル狂から抜け出せていたのでしょうか、それとも最後までギャンブルを続けていたのでしょうか。Gala Kalashnikova

 抜け出せていました。長編小説『悪霊』を執筆していた1871年が、最後にギャンブルをした年です。ギャンブル狂は10年ほど続きました。

ドストエフスキーは夫人を愛していましたか。

 2回結婚していました。最初の夫人は若い時に肺結核で亡くなりました。2番目の夫人とは14年一緒に生活していましたが、彼女をとても愛していました。

『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老のモデルはいたのでしょうか、それとも空想上の人物なのでしょうか。

 これはオプチナ修道院の修道士らと、空想上の理想的なキリスト教徒を組み合わせた人物です。

ドストエフスキーのどの作品から読み始めたらいいでしょうか。Juan N Xoconostle

こんな話題も:

日本読者の想像力

 一番最初は『貧しき人びと』を完読することをおすすめします。

ロシアでより多く読まれている作品は何ですか。KZ Long

 統計によると、『罪と罰』、『悪霊』、『白痴』です。

出版前に検閲にひっかかった作品はありますか。

 『悪霊』の「スタヴローギンの告白」の章が、検閲の段階で丸ごと削除されました。その後この部分だけが別巻として出版されました。

ドストエフスキーが一番愛していた自分の作品は何ですか。Rita S.

 執筆中の作品を一番愛していました。

ドストエフスキーが『ネートチカ・ネズワーノワ』の最後をどのような展開にしようと考えていたか、わかりますか。Débora Mestre

 ネートチカ・ネズワーノワが最後に歌手および女優になるという仮説は存在しますが、直接的な証拠はありません。

『悪霊』で私たちに何を訴えたかったのでしょうか。Jorge Pavlyuchenko Romero

 革命の誘惑がどれほど危険に機能するかを示し、その危険性を社会に警告しようとしていました。

なぜどの作品の主人公も、自殺寸前の、精神的に追い詰められた状況にあるのでしょうか。なぜこのように暗いのでしょうか。

 ドストエフスキーが、普通の状態の人間よりも、ギリギリの状態にある人間の方が共感されやすいと考えていたからです。

ドストエフスキーが登場人物を考案していた時、社会的な疑問や問題はどれほど影響を及ぼしていたのでしょうか。Literatura Russa

 社会的な問題は圧倒的影響を及ぼしており、ドストエフスキーはそれにとりつかれていました。

私は今、ニコライ・ベルジャーエフの「ドストエフスキーの世界観」を読んでいます。ベルジャエフはドストエフスキーのアイデアの良い解説者だったと思いますか。Paula Almarat

 ベルジャーエフの解釈はおもしろいですが、ドストエフスキーの作品に深く切り込んでいる部分は少ないです。

ドストエフスキーの主な見解は、モノローグよりも、作品の登場人物の会話の中で表現されているように感じます。あえてそうしていたのでしょうか。

 意識的にこのようにしていました。登場人物の会話の中では表現力がより豊かになり、劇文学として成り立つと考えていました。ドストエフスキーには、「言葉ではなく情景で」という物語の原則がありました。

なぜドストエフスキーの作品を読む必要があるのでしょうか。Jean-Marc Polakowski 

 これは最高の認識および自己認識の道だからです。

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる